生成 AI のコラム
COLUMN

社内のよくある質問に AI が自動で答える仕組みは作れるのか?導入の現実と失敗しない進め方

「FAQ ページを作ったのに、問い合わせが減らない」

よくある質問を洗い出して、回答を一つずつ書いて、社内ポータルに FAQ ページを作った。なのに問い合わせは減らない。「FAQ ページに載ってますよ」と返しても、次の質問はまた直接チャットで飛んでくる。そもそも FAQ ページの存在を知らないという人すらいる。

4月の新入社員、中途入社、異動してきた人。人が動くたびに

「有給休暇の申請ってどうすればいいですか?」
「出張精算のフォーマットはどこにありますか?」
「慶弔休暇って何日取れるんでしたっけ?」

と、同じ質問がゼロから始まる。FAQ ページを案内しても、情報量が多すぎて目的の回答にたどり着けず、結局チャットで聞いてくる。作る手間はかかったのに更新も追いつかず、気づけば内容が古くなっている項目もある。

「FAQ を自動で答えてくれる仕組みって、作れないのかな」

この記事は、そんな素朴な疑問を持った方に向けたものです。結論から言えば、作れます。しかも、想像しているよりも短い期間で、現実的なコストで。ただし「どうやって作るか」の選択肢を間違えると、手間ばかりかかって結局使われない仕組みになってしまいます。

本記事では、社内のよくある質問に AI が自動で答える仕組みの「作り方の選択肢」と「よくある落とし穴」、そして実際に短期間で実用化した企業の事例を紹介します。

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社内 FAQ の自動化、最初に思いつく 2 つのやり方とその限界

「社内の FAQ を自動化したい」と思ったとき、まず思いつくのはだいたい次の 2 つです。しかし、どちらもやってみると壁にぶつかります。

やり方 ①:Q&A リストを手作業で作って検索できるようにする

最もイメージしやすいのは、「よくある質問とその回答」を一問一答の形で作成し、社内ポータルや FAQ ページに掲載する方法です。従来型の FAQ ツールやチャットボットサービスの多くもこの仕組みをベースにしています。

一見シンプルですが、実際にやってみると想像以上に大変です。まず、想定される質問を洗い出し、それぞれに正確な回答を作成する必要があります。就業規則だけでも数十項目、それに経費精算や各種申請手続きまで含めると、数百単位の Q&A を整備しなければなりません。さらに、規程が改定されるたびに Q&A を更新する手間が継続的に発生します。そして、利用者が想定どおりの言葉で質問してくれるとは限らないため、少しでも表現が違うと「該当する回答が見つかりませんでした」と返ってしまう。結局、メンテナンスが追いつかず、使われなくなっていくケースが少なくありません。

やり方 ②:ChatGPT などの AI にそのまま聞いてみる

次に試したくなるのが、ChatGPT のような AI にそのまま社内の質問を投げてみる方法です。「うちの会社の有給休暇は何日?」と聞いてみると、返ってくるのは「労働基準法では年次有給休暇は〜」という一般論。当然ですが、世の中で広く使われている AI は自社の就業規則を知りません。社内固有のルールには答えられないのです。

「AI ってこんなものか」と、ここで検討が止まってしまう方は非常に多いです。しかし実は、AI が自社の話に答えられないのは、AI の能力が足りないからではなく、自社の情報を AI に渡していないからにすぎません。

「第3の方法」がある。AI に社内の資料を読ませて答えさせる

Q&A を一つずつ手作業で登録するのは大変。かといって AI にそのまま聞いても自社のことは知らない。では、どうすればいいのか。

実は近年、この2つの課題をまとめて解決する方法が実用化されています。それが、社内にすでにあるマニュアルや規程を AI に読み込ませ、その内容をもとに質問に答えさせるという仕組みです。

この仕組みのポイントは、Q&A を一問一答で作成する必要がないことです。就業規則の PDF、経費精算マニュアルの Word ファイル、各種手続きの案内文書など、社内にすでに存在する資料をそのまま AI に渡すだけ。AI は質問を受け取ると、まずそれらの資料の中から関連する箇所を検索し、該当する内容を読み取ったうえで回答を組み立てます。

技術的には「RAG(検索拡張生成)」と呼ばれる仕組みですが、利用する側が技術用語を覚える必要はありません。大事なのは次の 3 点です。

1. Q&A を一つずつ登録する必要がない

今ある社内資料をそのまま読み込ませるだけで、AI が質問の意図を理解して該当箇所から回答を生成します。Q&A リストの作成やメンテナンスの手間から解放されます。

2. 「うちの会社のルール」に基づいた回答ができる

AI は一般論ではなく、読み込ませた自社の規程やマニュアルの内容に基づいて回答します。「うちの有給休暇は入社3年目から○日」といった自社固有の情報にも対応できます。

3. 回答の根拠を示せる

「この回答は○○規程の第△条に基づいています」といった出典リンクを表示させることが可能です。利用者が自分で原文を確認できるため、AI の回答への信頼性が担保されます。

つまり、「よくある質問に自動で答えてくれる仕組み」は、Q&A を手作業で作るのではなく、今ある社内資料を AI に読ませることで実現できるのです。

導入で失敗しないための 3つのポイント

社内の問い合わせ対応を AI で自動化する際に、多くの企業がつまずくポイントと、その回避策を整理します。

① 対象範囲を絞って「小さく始める」

すべてのマニュアルを一度に AI に読み込ませようとすると、回答精度の検証に時間がかかり、プロジェクトが長期化します。まずは就業規則や経費精算など、問い合わせ頻度が高く、回答の根拠が明確な領域に絞って始めるのが鉄則です。効果が確認できたら、対象範囲を段階的に広げていけば問題ありません。

② 回答に「出典」を表示する仕組みを入れる

AI の回答に「この回答は○○規程の第△条に基づいています」といった参照元リンクを表示できれば、利用者が自分で正確性を確認できます。これがあるかないかで、社内での信頼度は大きく変わります。「AI の回答って本当に合ってるの?」という不安を解消するうえで、出典表示は欠かせない機能です。

③ 利用状況を測定できる設計にする

「導入しても使われなかったらどうするのか」という懸念に対しては、利用状況のデータを最初から取得できる設計にしておくことが有効です。「月にどれだけ使われているか」「どんな質問が多いか」を可視化できれば、改善にもつなげられますし、社内への効果報告にもそのまま使えます。

上司・経営層への説明で押さえておきたいこと

社内 FAQ の AI 自動化は、管理部門の担当者だけでは決裁が完結しないケースがほとんどです。予算承認を通すために、押さえておきたいポイントを整理します。

「コスト削減額」より「工数の再配分」で説明する

AI 導入の効果を金額だけで示そうとすると、根拠が弱くなりがちです。「月に○時間かかっている問い合わせ対応のうち、定型的な質問を AI に任せることで、担当者が本来の業務に集中できるようになる」という「工数の再配分」のフレームのほうが、経営層の理解を得やすくなります。

「まず1部署、1業務から始める」提案にする

いきなり全社導入を提案すると、予算も期間も大きくなり、承認のハードルが上がります。「まず総務部の就業規則 FAQ だけ」「まず経理部の経費精算の問い合わせだけ」と範囲を限定した提案にすれば、初期投資を抑えつつ「やってみなければわからない」という不安にも対応できます。

「効果が見えなければすぐやめられる」設計であることを伝える

「導入効果がわからないものに予算は出せない」という反論に対しては、「利用状況のデータを最初から取れる設計にするので、効果が見えなければ早期に判断できる」と説明できれば、意思決定のハードルは大きく下がります。月間の利用量やコストが数値で見える仕組みが最初から備わっていれば、次年度の予算承認にも使えるデータが自動で蓄積されます。

自社に合うかを見極める 3つの判断軸

判断軸 確認すること
問い合わせの反復性 同じような質問が繰り返し発生しているか。回答の根拠となるマニュアルや規程が文書として存在するか
現状の対応工数 問い合わせ対応に月あたりどの程度の時間が費やされているか。担当者の本来業務を圧迫しているか
社内の AI 知見 AI ツールの導入・運用を自社だけで行えるか。外部パートナーの支援が必要か

「問い合わせ頻度が高く」「回答の根拠となるマニュアルが文書として存在し」「対応工数が担当者の業務を圧迫している」。この3つが揃っていれば、AI による FAQ 自動化で効果が出やすい環境です。社内に AI やクラウドの知見が乏しい場合でも、外部パートナーを活用すれば技術面のハードルを下げながら短期間で成果を出すことが可能です。

実際に「社内のよくある質問に AI が答える仕組み」を導入した企業の事例

ここまで紹介してきた考え方を、実際に形にした企業の事例を紹介します。

事例 1:就業規則の FAQ を約1ヶ月半で自動化

水と環境に関するコンサルティング・ソフトウェア開発を手がける株式会社NJS 様は、社内 IT サポートや就業規則に関する問い合わせ対応に多くの工数が割かれていました。AI の導入を社内で検証していましたが、AI が一般的な回答を返してしまったり、社内規程と微妙に異なる回答が出るなど、正確性に課題を抱えていました。

この課題に対し、株式会社 NJS 様は、対象を就業規則に絞り、社内の規程文書をそのまま AI に読み込ませる方式を採用。回答には参照元ファイルへのリンクを表示し、利用者が根拠を確認できる仕組みを実現しました。さらに、利用履歴を蓄積・可視化する分析基盤も初期から構築。プロジェクト開始から約1ヶ月半でのリリースを実現しています(参考:NJS 様導入事例)。

事例 2:部署ごとの FAQ を整理し、全社で使える仕組みを構築

総合不動産会社の小田急不動産株式会社様は、社内資料の検索効率化を目的に、全社で使える AI チャットの導入を進めていました。部署ごとに管理する資料が異なるため、検索時に部署名や業務名をタグとして設定できる仕組みを追加。部署ごとに必要な情報を迅速に取得できるようにしました。さらに、非 IT 部門の社員でも迷わず使えるよう画面設計にもこだわり、チャット履歴のダウンロード機能で利用状況の分析も可能にしています(参考:小田急不動産様導入事例)。

「かんたん AI パック」なら、社内 FAQ の AI 自動化を短期間で実現できる

こうした課題を短期間で解決する手段として、KDDIアイレットでは「Google Cloud かんたん AI パック」を提供しています。社内のよくある質問に AI が答える仕組みを構築する際に生じる「よくある不安」を、まとめて解消できるサービスです。

「Q&A を全部作るのは無理」→ 今ある資料をそのまま読み込ませるだけ

かんたん AI パックでは、社内にすでにある PDF や Word などの資料をそのまま AI に読み込ませ、質問に応じて該当箇所を検索・回答する仕組みを構築します。Q&A を一問一答で作成する必要はありません。規程やマニュアルが更新された場合も、ファイルを差し替えるだけで対応できます。

「何から始めればいいかわからない」→ パッケージ化で迷わない

AI チャットの構築に必要なインフラ・アプリケーション・運用設計がパッケージ化されており、ゼロから設計する必要がありません。実績あるアーキテクチャをベースに自社要件を組み込む形で進めるため、「何をどの順番で決めればいいか」に悩むことなく導入を進められます。

「何ヶ月もかかるのでは」→ 約1ヶ月半で実用化した実績あり

対象を就業規則などに絞り、「かんたん RAG プラン」を活用すれば、約1ヶ月半での実用化も現実的です。効果が確認できてから対象範囲を広げる段階的アプローチなので、大規模な初期投資も不要です。

「導入効果を証明できるか不安」→ 効果測定の仕組みを標準装備

利用履歴の蓄積・可視化の仕組みが最初から組み込まれているため、「どれだけ使われているか」「コストに見合っているか」を定量的に示せます。導入後の社内報告にも、次年度の予算承認にもそのまま活用できる設計です。

「社内の資料がバラバラでも大丈夫?」→ 散在した情報をそのまま活用可能

PDF、Word、業務システムの対応履歴など、形式がバラバラな社内情報をそのまま読み込み、AI が横断的に検索・回答する仕組みを構築できます。「まず社内のデータを整理しないと始められない」ということはなく、今ある資料をそのまま活かせます。SaaS 型の AI ツールにも類似の機能はありますが、散在した情報の横断検索や部署ごとのアクセス制御、将来的な業務拡張まで見据えると、自社環境に構築するアプローチに優位性があります。SaaS との詳しい比較については、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

👉 「社内マニュアルから回答してくれる AI」は本当に作れるのか?

まとめ:社内 FAQ の AI 自動化は、小さく・手軽に始められる

「社内のよくある質問に自動で答えてくれる仕組みがほしい」と思いながらも、「Q&A を全部作るのは大変そう」「AI に聞いても自社のことは答えてくれなかった」という経験から、検討が止まっている方は少なくありません。

しかし、今の AI は Q&A リストを手作業で作らなくても、社内にすでにある資料を読み込ませるだけで、よくある質問に自社のルールに基づいて回答できる仕組みを構築できます。しかも、すべてを一度に変える必要はありません。

  • 同じ問い合わせの繰り返しに悩んでいるなら:まず就業規則や社内 FAQ など、回答の根拠が明確な領域から始める
  • SaaS の AI 機能との違いが気になるなら:散在した社内資料をそのまま読み込み、出典付きで回答する仕組みが構築できるかどうかを判断軸にする
  • 予算承認が不安なら:小さく始めて効果を可視化し、データで次の投資判断を支える設計にする

「対象を絞る」「今ある資料をそのまま活かす」「効果測定を組み込む」。この 3つの工夫で、社内 FAQ の AI 自動化は決してハードルの高い取り組みではなくなります。

KDDIアイレットでは、「Google Cloud かんたん AI パック」をはじめとする生成 AI 導入支援サービスを通じて、社内 FAQ の AI 自動化の企画・構築・運用改善までを一気通貫で支援しています。「まだ要件が固まっていない」「Q&A を作るところから始めなければいけないと思っていた」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

Google Cloud かんたん AI パックの詳細お問い合わせはこちら

ページ監修者

加藤 翔太の顔写真
加藤 翔太
DX開発事業部 クロスイノベーションセクション セクションリーダー

ウェブ・モバイルアプリ開発を通じ顧客の課題解決に取り組む。PM、開発エンジニア、プリセールスとしてプロジェクトを推進。最近は生成 AI を活用したチャットボット開発等の業務改善やデータ分析での営業支援に注力している。

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