生成 AI のコラム
COLUMN

契約書の AI レビューは自社でも導入できる? 生成 AI を「契約書チェック」から始めて社内全体に広げる方法

「契約書の確認、毎回同じところで止まってるな、、、」

法務を担当されている方であれば、取引先から届いた契約書を前にして、こんな経験はないでしょうか。

法務部門がある企業でも、契約書の確認依頼が集中すれば、回答までに数日かかることは珍しくありません。法務の専任担当者がいない企業であれば、総務や管理部門が兼務で対応しているケースも多く、確認作業に割ける時間はさらに限られます。いずれの場合でも、「詳しい人に聞かないと先に進めない」という状態が常態化していないでしょうか。契約書の確認は「以前から契約まわりに詳しいベテラン社員」に集中し、その人が休んだり異動したりすると、途端に業務が滞る。こうした属人化の課題を抱えている企業は多いはずです。

リーガルテック系の専用 SaaS を検討してみたものの、

  • 「自社の契約審査基準に合うのか判断がつかない」
  • 「機密性の高い契約書を外部サービスに預けてよいのか不安」
  • 「契約書チェックだけのために専用ツールを導入するほどの頻度があるのか」
といった理由で、検討が止まってしまうケースも少なくありません。

本記事では、契約書の AI レビューを検討し始めた方に向けて、リーガルテック SaaS との違い、セキュリティ面の考え方、そして契約書チェックを入口にしながら他の業務にも AI を広げていく方法を解説します。

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「契約書 AI レビュー」を検討し始めて、つまずく典型パターン

「契約書の確認を AI で効率化できないか」。そう考えて情報収集を始める方は増えています。しかし、いざ具体的に動き出そうとすると、多くの方が同じところでつまずきます。

① リーガルテック SaaS を検討したが、セキュリティと自社適合性が不安

まず検討するのが、契約書レビュー専用のリーガルテック SaaS です。AI が契約書の条文リスクを自動検出し、修正案を提示する。機能としては魅力的に見えます。しかし実際に導入を検討し始めると、いくつかの不安が出てきます。

まずセキュリティです。契約書には取引先との取引条件、金額、秘密保持の範囲など、社内でも特に機密性の高い情報が含まれます。これを外部の SaaS 環境にアップロードすることに対して、「本当に問題ないのか」という判断を社内だけで下すのは簡単ではありません。

次に自社適合性です。リーガルテック SaaS は法令や判例に基づく一般的なリスク検出に強みがありますが、「自社の契約審査基準に照らしてチェックする」「過去に自社が締結した契約の条件と比較する」といった、自社固有のルールに基づいた確認には対応しきれない場合があります。

こうした不安を社内で解消できず、「どの生成 AI ツールが自社に合うのか」「セキュリティ面は本当に大丈夫なのか」という判断を保留したまま、検討が長期化してしまうのです。

② 「契約書だけ」に専用ツールを入れる費用対効果が見えない

もう一つよくあるのが、「契約書チェックだけのために月額費用を払い続けるのか」というコストへの疑問です。特にリーガルテック SaaS はユーザー数に応じた月額課金モデルが多く、法務専任がいない企業にとっては、利用頻度に対してコストが見合わないと感じることがあります。

一方で、社内には契約書以外にも AI を使いたい業務がある。社内の FAQ への対応、社内文書の翻訳、プレゼン資料のドラフト作成など、「AI があれば楽になるのに」という場面は日常的に発生しています。しかし、用途ごとに専用ツールを個別に契約していくと、コストも運用の手間も膨らんでいきます。

こうした背景から注目されているのが、契約書チェックも、それ以外の業務も、1つのクラウド基盤上でまとめてカバーする「自社基盤型の AI」というアプローチです。

リーガルテック SaaS と「自社基盤型の AI」は何が違うのか

「契約書 AI レビューのツールはすでにあるのに、なぜ自社開発のようなアプローチが必要なのか」。社内で導入を提案する際に、最もよく聞かれる質問です。

リーガルテック SaaS と、自社のクラウド環境に構築する AI では、そもそもの設計思想が異なります。リーガルテック SaaS は「法律の専門家の視点で契約書の条文をチェックする」ことに特化したツールです。一方、自社クラウド環境に構築する AI は、契約審査基準や社内規程、過去の契約書ひな形といった「自社のルールと情報資産」を参照させることで、自社固有の判断基準に基づいた確認を可能にするアプローチです。

この仕組みの核となるのが RAG(検索拡張生成)という技術です。RAG とは、AI が回答を作る前に、まず社内の文書の中から該当する箇所を検索し、その内容をもとに回答を組み立てる仕組みです。いわば「社内ルールを読んでから答える AI」です。

リーガルテック SaaS は法的リスクの検出において明確な強みがあり、M&A や大型取引など高度な法務判断が求められる場面では有力な選択肢です。一方、中堅企業が日常的に直面するのは「自社ルールに合っているかの確認」や「過去の類似契約の参照」であり、加えて「契約書以外にも AI を活用したい業務が複数ある」という状況です。こうしたニーズに対しては、1つの基盤で複数の業務をカバーできる自社クラウド型のアプローチが適しています。

なお、両者は排他的な関係ではありません。自社基盤で契約ルールの参照と日常業務の AI 活用を進めつつ、高度な法的チェックが必要な場面ではリーガルテック SaaS や外部の専門家を併用するという使い分けも有効です。

比較軸 リーガルテック SaaS 自社クラウド環境に構築する AI
チェックの基準 法令・判例に基づく一般的なリスク検出 自社の契約審査基準・チェックリスト・過去の契約条件に基づく確認
セキュリティ ベンダー環境にデータを預ける形になる 自社のクラウド環境内に閉じた構成が可能。機密情報の誤出力防止もプロンプトレベルで制御可能
認証・アクセス制御 SaaS 側の認証基盤を利用 既存の社内認証基盤と統合可能。部署や役職に応じたアクセス制限も設計可能
参照できる情報 サービス提供元が用意した法的データベース 自社の契約審査基準、過去の契約書ひな形、社内規程などを自由に登録可能
回答の根拠 法令・判例の引用 社内ルールの該当箇所を出典として表示。原文へのリンクで確認も可能
コストモデル ユーザー数 × 月額課金が一般的 クラウド基盤の利用料ベース。全社利用でもコストが急増しにくい
他の業務への拡張 契約書チェック以外の用途には別契約・別ツールが必要 同じ基盤上で議事録作成、社内文書の翻訳、資料作成支援など多用途に拡張可能

契約書の AI レビューで「よくある失敗」を避けるには

契約書の確認業務に AI を活用する際に気をつけるべきポイントは、以下の 3 点に集約されます。

① 回答に「出典」を表示する仕組みを入れる

契約書の確認は、正確さが特に求められる業務です。AI の回答に「この回答は契約審査基準の第○条に基づいています」といった参照元リンクを表示できれば、利用者が自分で原文に当たって正確性を確認できます。これがあるかないかで、社内での信頼度は大きく変わります。AI による確認はあくまで一次チェックの効率化であり、重要な契約や高額な取引については、最終判断を担当者が行なうプロセスを残しておくことも大切です。

② 対象を絞って「小さく始める」

すべての契約書を一度に対象にしようとすると、精度検証に時間がかかり、プロジェクトが長期化します。まずは利用頻度の高い契約類型(業務委託契約、秘密保持契約など)に絞って始めるのが鉄則です。効果が確認できたら、対象範囲を段階的に広げていけば問題ありません。

③ 最初から「契約書以外にも広げる前提」で基盤を選ぶ

前述のとおり、契約書チェックだけに専用ツールを導入すると、他の業務で AI を使いたくなった際に再び別ツールの選定から始めることになります。最初から「契約書チェックを入口にしつつ、将来的に他の業務にも同じ基盤を使う」という前提で導入先を選んでおくと、結果的にコストも運用の手間も抑えられます。

予算承認を通すための整理術

契約書 AI レビューの導入は、管理部門の担当者だけでは決裁が完結しないケースがほとんどです。経営層への説明で押さえておきたいポイントを整理します。

「コスト削減額」より「工数の再配分」で説明する

AI の効果を金額だけで示そうとすると、根拠が弱くなりがちです。「月に○時間かかっている契約確認のうち、定型的な確認項目を AI に任せることで、担当者がより重要な判断業務に集中できるようになる」という「工数の再配分」のフレームのほうが、経営層の理解を得やすくなります。

「契約書だけでなく他の業務にも使える」ことを伝える

契約書チェック単体では費用対効果の説明が難しくても、「同じ基盤で議事録作成や社内文書の翻訳、資料作成の下書きにも使える」と伝えれば、投資対効果の見え方が変わります。1つの基盤投資で複数の業務効率化が実現できるという点は、経営層にとって納得感のある説明材料です。

効果測定のデータが「最初から取れる」ことを強調する

「導入効果がわからないものに予算は出せない」という反論に対しては、「利用状況のデータを最初から取れる設計にするので、効果が見えなければ早期に判断できる」と説明できれば、意思決定のハードルは大きく下がります。

自社に「契約書 AI レビュー」が合うかを見極める 3 つの判断軸

判断軸 確認すること
契約確認の属人化 契約書の確認が特定の担当者やベテラン社員に集中しているか。その人が不在だと業務が滞る状況があるか
社内ルールの存在 契約審査基準やチェックリスト、過去の契約書ひな形が文書(PDF・Word など)として存在しているか。完全に整理されていなくても、何らかの形で残っていれば対応可能
契約書以外の AI 活用ニーズ 契約書の確認以外にも、文書翻訳、資料作成など、AI を使いたい業務があるか。ある場合は、複数の専用ツールを個別導入するより、1つの基盤でまとめて対応するアプローチが有効

「契約確認が属人化しており」
「参照すべき社内ルールが文書として存在し」
「契約書以外にも AI を活用したい業務がある」

この3つが揃っていれば、契約書を入口にした生成 AI 基盤の導入が効果を発揮しやすい環境です。

契約書 AI レビューの活用ユースケース

ここまで紹介してきたポイントを踏まえ、実際にどのような場面で AI が役立つのか、具体的なユースケースを紹介します。

ユースケース①:業務委託契約の一次チェック

取引先から届いた業務委託契約書を AI に読み込ませ、社内の契約審査基準と照合する使い方です。
「支払いサイトが自社ルールの上限を超えていないか」
「損害賠償条項の範囲が自社基準と合っているか」

といった定型的な確認項目を AI が一次チェックし、確認が必要な箇所を担当者に提示します。チェック結果には社内基準の該当箇所が出典として表示されるため、担当者は AI の回答を鵜呑みにせず、自分で原文に当たって判断できます。

ユースケース②:過去の契約条件の横断参照

「以前、同じ取引先と結んだ契約ではどんな条件だったか」
「類似案件で他部署が締結した契約の条件は」
といった、過去の契約情報を横断的に参照する使い方です。従来であればフォルダを一つずつ開いて探すか、当時の担当者に聞くしかなかった情報に、AI への質問一つでアクセスできるようになります。

ユースケース③:契約書以外の業務への拡張

契約書チェックで構築した AI 基盤は、同じ仕組みを使って他の業務にも活用できます。たとえば、海外取引先向けの文書を翻訳する、社内規程や業務マニュアルを参照して FAQ に回答するといった用途に、追加の専用ツールなしで拡張していくことが可能です。「まず契約書チェックで AI の効果を実感し、効果が確認できたら他の業務にも広げていく」という段階的なアプローチが取れるのは、汎用的な生成 AI 基盤ならではの強みです。

いずれのユースケースでも、AI の回答はあくまで一次チェックや情報検索の効率化であり、最終判断は担当者が行ないます。AI は判断を代替するものではなく、確認作業の精度とスピードを底上げするためのツールとして位置づけることが大切です。

「かんたん AI パック」なら、契約書チェックから始めて社内全体に広げられる

ここまで整理してきた「よくある不安」を解消するためのサービスとして、KDDIアイレットでは「Google Cloud かんたん AI パック」を提供しています。かんたん AI パックであれば、契約書 AI レビューの導入を検討する際の課題を解消しながら、将来的な業務 AI の拡張までを見据えた基盤を構築できます。

「機密文書を外部に預けるのが不安」→ 自社クラウド環境に閉じた構成

かんたん AI パックは Google Cloud 上に自社専用の環境を構築する形をとるため、契約書や契約審査基準といった機密文書を外部の SaaS に預ける必要がありません。既存の社内認証基盤との連携や、部署・役職に応じたアクセス制限の設計にも対応しており、「誰がどの契約情報を参照できるか」をコントロールできます。機密情報の誤出力を防ぐための制御も、プロンプト設計のレベルで組み込むことが可能です。

「何から始めればいいかわからない」→ パッケージ化で迷わない

かんたん AI パックは、社内文書を参照する AI チャットボットの構築に必要なインフラ・アプリケーション・運用設計をパッケージ化したサービスです。ゼロから設計するのではなく、実績あるアーキテクチャをベースに自社要件を組み込む形で進めるため、「どの生成 AI ツールが自社に合うのか」「何をどの順番で決めればいいか」に悩む必要がありません。

「契約書だけでは投資対効果が出にくい」→ 同じ基盤で多用途に拡張

かんたん AI パックで構築した基盤は、契約書チェックだけでなく、社内規程の検索、業務マニュアルの参照、議事録の作成支援、文書の翻訳といった多様な業務に、同じクラウド基盤上で段階的に拡張できます。専用ツールを用途ごとに個別契約する必要がないため、1つの基盤投資で複数の業務効率化を実現できます。

「導入効果を証明できるか不安」→ 効果測定の仕組みを標準装備

利用履歴の蓄積・可視化の仕組みが最初から組み込まれているため、「どれだけ使われているか」「コストに見合っているか」を定量的に示せます。導入後の社内報告にも、次年度の予算承認にもそのまま活用できる設計です。

まとめ:契約書 AI レビューは「入口」にすぎない

「契約書の確認を AI で効率化したい」と思いながらも、「リーガルテック SaaS のセキュリティが気になる」「自社に合うツールがわからない」「契約書だけに専用ツールを入れるのはコストが合わない」という理由で検討が止まっている方は少なくありません。しかし、すべてを一度に解決する必要はありません。

  • 契約確認がベテラン社員に集中しているなら
    まず社内の契約審査基準を AI に読み込ませ、一次チェックを効率化する仕組みを作る
  • セキュリティが不安なら
    外部 SaaS にデータを預けない、自社クラウド環境に閉じた構成を選ぶ
  • 契約書以外にも AI を使いたい業務があるなら
    契約書チェックを入口にして、同じ基盤で議事録作成、文書翻訳、社内 FAQ など多用途に広げられる基盤を選ぶ

契約書 AI レビューは、生成 AI を社内に導入する「最初の一歩」に適したテーマです。機密情報を扱うからこそセキュリティ設計をしっかり行ない、効果が確認できたら他の業務にも広げていく。この段階的なアプローチであれば、初期投資を抑えつつ、着実に成果を積み上げることができます。

KDDIアイレットでは、「Google Cloud かんたん AI パック」をはじめとする生成 AI 導入支援サービスを通じて、契約書 AI レビューの構築から、社内全体への生成 AI 活用の拡張までを一気通貫で支援しています。「まだ要件が固まっていない」「リーガルテック SaaS と何が違うのか整理したい」「セキュリティ面の考え方を相談したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

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ページ監修者

加藤 翔太の顔写真
加藤 翔太
DX開発事業部 クロスイノベーションセクション セクションリーダー

ウェブ・モバイルアプリ開発を通じ顧客の課題解決に取り組む。PM、開発エンジニア、プリセールスとしてプロジェクトを推進。最近は生成 AI を活用したチャットボット開発等の業務改善やデータ分析での営業支援に注力している。

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