生成 AI のコラム
COLUMN

Vertex AI とは?機能・料金・導入ステップをエンジニアが徹底解説

クラウド環境での AI モデル開発や運用において、プラットフォームの選定は重要な意思決定です。機械学習の専門知識が不足している、あるいは生成 AI と従来の機械学習を統合して扱う基盤が見当たらないといった課題に対し、 Google Cloud の Vertex AI は有力な選択肢となります。本記事では、Vertex AI の主要機能から料金体系、導入ステップまで、ビジネス活用を検討する上で必要な情報を網羅的に解説します。

Vertex AI の概要

Vertex AI は、 Google Cloud が提供するフルマネージドな AI 開発プラットフォームです。生成 AI の活用から従来の機械学習モデルの構築まで、データの取り込みからデプロイ、運用に至る一連のプロセスを統合された環境で実行できます。

フルマネージド AI 開発プラットフォームとしての特性

Vertex AI の大きな特徴は、 AI 開発ライフサイクル全体をひとつのプラットフォームに集約している点にあります。従来、モデルの本番稼働にはデータの前処理やトレーニング、評価、デプロイといった工程ごとに個別のツールが必要でした。 Vertex AI はこれらを統合し、データサイエンティストから技術的な専門知識が限られているビジネス担当者までが、共通の基盤上で開発に参加できる環境を提供します。

インフラ管理を Google Cloud 側が担うフルマネージドサービスであるため、利用者はサーバーの維持管理ではなくモデルの改善に注力できます。スケーリングや可用性の確保も自動化されています。

参照:Vertex AI Platform | Google Cloud

注目される理由と主な特長

Vertex AI が多くの企業に導入されている理由は、主に 4 つの強みに集約されます。

  • 統合環境:プロンプト設計からカスタムモデルのトレーニング、MLOps による監視まで一気通貫で実行可能。
  • 高性能モデル: Gemini 2.5 シリーズ(Pro / Flash)などの最新モデルを、エンタープライズグレードのセキュリティ環境下で即座に利用可能。
  • データ基盤との親和性: BigQuery や Cloud Storage とシームレスに連携。
  • 高度なセキュリティ: VPC Service Controls や IAM によるきめ細かなアクセス制御により、機密性の高いデータを扱う企業のコンプライアンス要件にも対応します。

参照:Vertex AI の概要 | Google Cloud


Vertex AI の主要機能

Vertex AI Studio でのプロンプト設計

Vertex AI Studio は、コーディングを行わずにブラウザ上の操作だけで生成 AI モデルを検証できるインターフェースです。テキスト入力や画像の解析、動画の読み取りを直接実行できるため、 AI 活用の初期検証において重要な役割を果たします。作成したプロンプトをテンプレートとして保存し、チーム内で共有することで活用の標準化を図れます。

Model Garden によるモデル選択

Model Garden は、Vertex AI 上で利用可能な AI モデルのライブラリです。2026年現在、 Google 製モデルだけでなく、サードパーティ製やオープンソースのモデルも含め、200種類以上の選択肢があります。

  • Google 製:マルチモーダルな Gemini 2.5 シリーズ、画像生成の Imagen 、動画生成の Veo など。
  • サードパーティ / OSS: Anthropic の Claude シリーズ、Meta の Llama、Google の Gemma など。

カスタムモデルのトレーニングと AutoML

独自のモデルを構築する手法として、 AutoML とカスタムトレーニングの2種類が用意されています。 AutoML は機械学習の深い知識を必要とせず、最適なモデルを自動で構築します。一方のカスタムトレーニングは、 TensorFlow や PyTorch 等を用いて、 GPU や TPU といった高性能リソースを完全に制御した高度な開発が可能です。


生成 AI 開発における Vertex AI の活用

Gemini モデルの実装と精度評価

Python や JavaScript などの言語に対応した Vertex AI SDK を通じて、 Gemini モデルを自社アプリケーションに組み込めます。

【重要】精度評価と運用

回答の質を担保するためには、忠実性(Faithfulness)や応答関連性(Response Relevancy)といった指標に基づいた評価が重要です。ハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクを抑制するため、評価フレームワークの活用や、最終的な回答を人間が確認する Human-in-the-loop の運用フローの設計を推奨します。

Vertex AI Agent Builder と RAG(検索拡張生成)

Vertex AI Agent Builder を使用することで、自律的にタスクを遂行する AI エージェントを最小限のコードで構築できます。
また、 RAG は社内独自のドキュメントを回答に反映させる手法です。Vertex AI Vector Search を活用し、社内規定やマニュアルをベクトル検索することで、正確で根拠(エビデンス)のある回答を生成します。


MLOps と運用管理

Vertex AI Pipelines により、前処理からデプロイに至る工程を自動化できます。生成されたモデルは Vertex AI Model Registry で一元管理され、バージョン履歴や評価指標が記録されます。また、モデルモニタリング機能により、入力データの分布変化(データドリフト)を検知し、精度の低下を未然に防ぐことが可能です。


Vertex AI の料金体系

Vertex AI は、使用したリソースに応じた従量課金制です。

生成 AI モデルのコスト(料金目安)

※100万トークンあたりの料金です。料金はモデルやリージョンにより異なります。

モデル ステータス 入力(テキスト) 出力(テキスト)
Gemini 2.5 Pro 安定版 $1.25〜 $10.00〜
Gemini 2.5 Flash 安定版 $0.30〜 $2.50〜
Gemini 3.1 Pro プレビュー $2.00〜 $12.00〜

※グラウンディング機能(Google 検索連携)は、月間5,000プロンプトまで無料、以降は1,000クエリあたり $14です。最新料金は Gemini API の料金ページ を確認してください。


導入ステップと活用のポイント

Vertex AI の導入は、初期設定から段階的な活用拡大へと進めるのがスムーズです。

  1. 環境構築: Google Cloud プロジェクトを作成し、Vertex AI API を有効化。IAM で最小権限を設定します。
  2. プロンプト検証: Vertex AI Studio で、実際の業務課題に即したプロンプトをテストします(無料クレジットの活用が可能)。
  3. 実装と自動化: SDK を用いた開発へ移行し、Pipelines を使った MLOps 基盤を構築して継続的な改善サイクルを確立します。

参照:Vertex AI を使ってみる | Google Cloud

最後に

Vertex AI は、開発の容易さと運用管理の高度さを兼ね備えた、エンタープライズに最適な AI プラットフォームです。自社の要件に適した構成の設計や、VPC SC を活用したセキュアな環境構築、あるいは具体的な RAG 実装に課題がある場合は、ぜひ cloudpack へご相談ください。

Google Cloud 生成 AI 導入支援サービス | cloudpack(クラウドパック)