Gemini カスタム指示のおすすめ設定例と Gem のチューニング・企業活用ガイド
Gemini を業務に合わせて活用したいと考える一方で、カスタム指示の記述方法が不明であり活用が進まない課題が存在します。
カスタム指示を適切に設定することで、毎回同じ指示を入力する手順を省略できます。業務に特化した回答を安定して引き出せるようになり、作業効率が向上します。本記事では、 Gemini のカスタム指示の基本から業務別の設定例、および企業での活用方法を解説します。
Gemini の Gem とカスタム指示の基本
Gem とは何か
Gem とは、 Gemini アプリ上で作成できるカスタム AI アシスタントです。特定のタスクや業務に特化した指示をあらかじめ設定しておくことで、毎回の会話でその設定に準拠した回答を生成します。
ビジネスメール作成アシスタントという Gem を作成した場合、件名と要件を入力するだけでビジネスシーンにふさわしいメール文面が生成されます。毎回同じ指示を入力する手間が省けるため、定型業務を反復するユーザーの作業を効率化します。
Gem は Gemini ウェブアプリから作成、保存、呼び出しが可能です。作成した Gem は左側のサイドバーに一覧表示され、用途に応じて切り替えて利用します。作成済みの Gem は編集や削除が可能であり、業務の変化に合わせて随時更新できます。
カスタム指示でできること
カスタム指示とは、 Gem に与える行動規範です。 Gemini に対して、どのような役割を担い、どのようなトーンで回答し、どのような制約の中で動作するかを事前に定義します。
カスタム指示を活用することで以下の要件を実現します。
回答の一貫性を保つ
毎回異なるプロンプトを入力しても、設定したペルソナやスタイルに沿った回答が得られます。文体、トーン、出力形式を固定することで、品質の安定した成果物を出力します。
業務特化の専門性を与える
マーケティング担当者であり BtoB 向けの技術的な製品を担当しているといったコンテキストを組み込むことで、汎用的な Gemini よりも自社業務に即した回答を引き出します。
誤回答や逸脱を防ぐ
業務と関係のないトピックには応じない、推測で回答せず不明な場合はその旨を伝えるといった制約を設けることで、信頼性の高い回答範囲を維持します。
無料版と有料版での利用範囲
Gem 機能は無料版の Gemini では利用できません。
個人ユーザーが Gem を作成および利用するには、 Google AI Pro プラン(旧 Google One AI Premium)などの有料プランに登録する必要があります。
企業ユーザーの場合は、 Google Workspace 向けの Gemini(Gemini Enterprise 等。プラン名称や構成は変更される場合があります)を契約することで、より高度なモデルの利用や Google ドライブとの連携、組織内での Gem 共有といった機能が利用可能になります。
企業での本格活用を計画している場合は、自社の要件に適合する有料プランの機能を事前に確認します。
カスタム指示を作る 4 つの要素
ペルソナの設定
Google が公式ヘルプで紹介しているカスタム指示の構成要素の一つがペルソナです。ペルソナとは、 Gem にどのような役割を担わせるかを定義する要素です。
ペルソナを設定することで Gemini の回答スタイルや視点が固定されます。プロのビジネスライターと設定すれば論理的で簡潔なビジネス文書を作成し、 IT サポートの担当者と設定すれば技術的な問い合わせに対してわかりやすく回答します。
ペルソナ設定の例を以下に示します。
- あなたは日本のビジネスシーンに精通したビジネスメール作成の専門家です。
- あなたは日英および英日翻訳に特化したプロフェッショナルな翻訳者です。
- あなたは初心者にもわかりやすく Python を教えるプログラミングコーチです。
- あなたは IT 企業向けの提案書作成をサポートするコンサルタントです。
ペルソナは他の3要素であるタスク、コンテキスト、形式の方向性を定める基盤となります。
タスクとコンテキストおよび形式の指定
ペルソナとあわせて設定する3つの要素について説明します。
タスク
Gemini に実行してほしい内容を具体的に指定します。メールの文面を作成する、会議の内容を議事録にまとめる、英語のドキュメントを日本語に翻訳するなど、目的を明確に記述します。タスクが曖昧であると Gemini が要求を誤認し、期待とは異なる回答が生成されます。
コンテキスト
タスクを実行する上で前提となる背景情報を伝えます。ターゲットは IT 担当者ではなく経営層である、社内向けの報告書であるため専門用語を避けるといった条件を加えます。自身の職種、業界、対象読者などを具体的に指定します。
形式
回答の構成やフォーマットを指定します。箇条書きで整理する、200字以内で要約する、マークダウン形式で出力するといった指定が含まれます。形式を明確に定義することで事後の修正作業を削減します。
すべての要素を含める必要はありませんが、複数の要素を組み合わせることで精度の高いカスタム Gem を作成できます。
Gemini を使ったカスタム指示の作成
カスタム指示をゼロから作成することが難しい場合は、Gemini 自身に指示文を作成させる手法が有効です。要件を自然な言葉で伝えるだけで、Gemini が構造化されたカスタム指示を自動生成します。
通常の Gemini チャットでカスタム指示の作成を依頼し、実行したい内容を記述します。
プロンプトの入力例:
Gem を作成するためのカスタム指示を考えてください。
Gem に実行してほしいこと
提出前のビジネスメールを確認して改善案を提案する
敬語や表現の不自然な箇所を指摘する
相手に好印象を与える表現に書き直す
修正理由を一言で説明する
この指示を入力すると、Gemini が 4 つの要素を網羅した指示文を生成します。生成された指示文を Gem の設定画面に貼り付けて登録します。生成された指示文をベースに修正を加えながら対話を通じて改善することで、専門知識を持たずに高品質な Gem を構築できます。
業務別おすすめカスタム指示の設定例
ビジネスメールや議事録の作成
業務で使用頻度が高い Gem のひとつがメールや議事録の作成支援です。
ビジネスメール作成アシスタントの例
あなたは日本のビジネスシーンに精通したメール作成の専門家です。
ユーザーが提供する件名、要件、相手の役職をもとに、適切な敬語を使ったビジネスメールを作成してください。
社内、社外、役員などの宛先に応じて敬語レベルを調整してください。
本文は簡潔にまとめ、300字前後を目安としてください。
件名、書き出し、本文、結び、署名のフォーマットで出力してください。
不明な情報がある場合は確認のため質問してください。
議事録作成の例
あなたは会議の内容を正確かつ簡潔にまとめる議事録作成の専門家です。
ユーザーが提供する会議の発言内容や箇条書きメモをもとに、構造化された議事録を作成してください。
以下のフォーマットで出力してください。
1. 日時、出席者、議題
2. 決定事項を箇条書きで記載
3. 担当者と期限を含めたアクションアイテム
4. 次回確認事項
5. 特記事項
これらのカスタム指示を保存しておくことで、メモを貼り付けるだけで完成度の高い文書が生成され、業務効率が向上します。
翻訳と文書編集
翻訳や文書編集では細かなニュアンスの指定が品質を決定します。カスタム指示で翻訳のスタイルや専門分野を設定することで、精度の高い結果が得られます。
英日翻訳アシスタントの例
あなたは IT およびクラウド分野に精通したプロフェッショナルな翻訳者です。
英語の文書を自然な日本語に翻訳してください。
IT 専門用語は日本語の標準的な訳語に統一してください。
製品名やサービス名などの固有名詞は原文のまま表記してください。
ビジネス文書として適切なですます調の文体を使用してください。
意味が不明確な箇所は、原文と翻訳候補を両方提示してください。
文章編集アシスタントの例
あなたは論理的で読みやすい文章を専門とする編集者です。
提供された文章を以下の観点で編集し、改善案を提示してください。
確認項目
1 文が50字以内を目安に収まっているか
主語と述語が明確であるか
不要な繰り返し表現が含まれていないか
読者に伝わりやすい言葉遣いであるか
編集後の文章と、変更した理由を簡潔に説明してください。
翻訳および編集の Gem は、担当者のスキルに依存せず組織全体で一定の品質水準を維持する効果を持ちます。
調査や分析およびレポート作成
調査や分析業務においても、カスタム指示を活用することで情報を整理する手順を自動化できます。
市場調査レポート作成の例
あなたは BtoB マーケティングに精通した市場調査アナリストです。
提供されたテーマや情報をもとに、経営層向けの調査レポートを作成してください。
以下の構成で出力してください。
1. 200字以内のエグゼクティブサマリー
2. 市場の概況
3. 3から5項目の主要なトレンド
4. 課題と機会
5. 示唆および考察
専門用語にはわかりやすい説明を付記してください。
根拠のない断定は避け、不確かな情報には推測であることを示す表現を使用してください。
データ分析サマリーの例
あなたはデータを可視化し示唆を導き出すデータアナリストです。
提供された数値データや集計表をもとに、わかりやすいサマリーを作成してください。
主要な数値の増減や比較を簡潔に説明してください。
ビジネス上の意味や示唆を加えてください。
次のアクションにつながる提言を含めてください。
グラフや表が必要な場合は作成すべき可視化の提案を行ってください。
調査や分析系の Gem は、ファイルアップロード機能を利用して社内データや参考資料を読み込ませることで、自社の状況に即した高精度な分析を実現します。
Gem のクオリティを高めるチューニング方法
プレビューによる動作確認
Gem 作成画面の右側に配置されたプレビューウィンドウを使用して動作を確認します。保存前に実際のプロンプトを入力してテストを実施し、カスタム指示が意図通りに機能しているかを検証します。
確認すべき主なポイントは以下のとおりです。
ペルソナが維持されているか
設定した役割やトーンが回答に反映されているかを確認します。丁寧な文体を指定したにもかかわらずカジュアルな表現が出力される場合は、ペルソナの指定を修正します。
出力フォーマットが守られているか
指定した箇条書きやマークダウン形式で出力されているかを確認します。形式が遵守されない場合は、数行のサンプル出力をカスタム指示に追加します。
制約事項が機能しているか
業務外の質問には答えないといった制約が動作するかを、意図的に外れた質問を入力して確認します。機能しない場合は指示を明確に再記述します。
プレビューウィンドウを使用しても Gem は自動保存されないため、動作を確認した後に必ず保存ボタンをクリックして確定させます。
継続的な改善サイクル
カスタム指示は実際の業務での使用を通じて問題点を発見し、継続的に改善を実施します。
改善サイクルの進め方
- 意図通りでない回答が出力されたやり取りを記録します。
- 指示の不足箇所や曖昧な部分を分析します。
- 原因に基づいてカスタム指示を修正します。
- 修正後にプレビューで意図通りの動作になったかを確認します。
- 確認を終えたら保存して運用を継続します。
改善案が特定できない場合は Gemini 自身に相談します。現在の指示文を提示し、より意図通りの回答を得るための改善提案を依頼することで修正案を取得できます。試行錯誤を繰り返すことで業務に最適化された Gem が完成します。
企業での活用と注意点
組織での Gem 共有と管理
作成した Gem を組織全体で活用することで業務品質の平準化を図ります。 Google Workspace 向けの Gemini では、管理者が組織内で Gem を共有・管理する運用が可能です。
組織での Gem 活用を進める際のアプローチは以下のとおりです。
用途別の Gem ライブラリを整備する
メール作成、議事録、翻訳、分析などの用途別に Gem を用意し、担当者を問わず同等の品質のアウトプットが得られる環境を構築します。
作成および管理担当者を決める
部門ごとに Gem の管理担当者を設け、バージョン管理や更新のルールを定義して管理の複雑化を防ぎます。
定期的な棚卸しを実施する
業務内容や組織の変化に合わせて、定期的に Gem の指示内容を見直します。古い情報が残存した状態での運用は回答品質の低下を招きます。
セキュリティとデータの取り扱い
Gem を業務に活用する際は情報の取り扱いに厳格な基準を設けます。
入力データの扱いを確認する
Gemini に入力した情報がモデルの学習に使用されるかどうかは利用するプランや設定に依存します。 Gemini アプリ アクティビティの設定をオフにすることで会話データの保存を制限できます。
機密情報の入力に注意する
顧客情報や未公開の財務情報などの機密データは、原則として外部サービスに入力しない社内ルールを定めます。カスタム指示にもこの制約を明記し、利用者への注意喚起を実施します。
Google Workspace のデータ保護
Google Workspace を利用する企業向けの Gemini では、入力データがモデルのトレーニングに使用されない設計が採用されています。企業のセキュリティ要件に合わせた設定を管理者が適切に構成します。
参照:Generative AI in Google Workspace Privacy Hub
カスタム指示を活用して業務効率を高めると同時に、情報管理のルールを社内で整備してセキュアな運用を実現します。
最後に
Gemini の Gem 機能にカスタム指示を設定することで、汎用的な AI アシスタントを自社の業務に特化したツールへと変換できます。
日常業務で最も頻繁に実行するタスクを選択し、Gemini にカスタム指示の作成を依頼する手順から開始します。生成された指示文を Gem に設定し、実際の運用の中で改善を重ねることで業務に最適化された環境が構築されます。
組織での活用においては、用途別の Gem ライブラリを整備し、情報管理のルールを明確に定義した上で運用を展開します。個人の業務効率化からチームや組織全体へと適用範囲を拡大することで、生成 AI の導入効果を最大化します。
cloudpack では、Gemini を含む Google Cloud の生成 AI 活用および導入を支援しています。カスタム Gem の設計から社内への展開および運用定着まで、企業の実情に合わせたトータルサポートを提供します。生成 AI の本格導入や組織全体への浸透に関するご相談は、 cloudpack までご連絡ください。