生成 AI のコラム
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Gemini の Gem(カスタム指示)とは?作り方や業務別の設定例を解説

Gemini を利用する際、毎回同じ指示を入力する作業が手間に感じられる課題があります。定型的なビジネスメールの作成や、翻訳時の出力形式の指定といった反復作業を効率化する機能が、 Gem によるカスタム指示です。

本記事では、カスタム指示の書き方の基本から、実務に適用可能な業務別の設定例までを解説します。

Gemini の Gem(カスタム AI アシスタント)とは

Gem 機能の概要と特徴

Gem は、Gemini に事前に役割や指示を設定しておくことで専用の AI アシスタントを作成できる機能です。

一度カスタム指示を設定すると、その Gem を使用して会話を開始するたびに設定した役割や動作が自動的に適用されます。文書作成専用、翻訳専用、議事録作成専用といった用途に特化した AI を作成し、継続的に利用できます。

特定の目的に合わせた Gem を複数用意しておくことで、毎回指示を書き直す手間を削減します。チームメンバー間で同一の Gem を共有すれば、業務成果物の品質を均一に保つことが可能になります。

参照:Gemini アプリで Gem を使用する

通常チャットとの違い

通常の Gemini チャットでは、会話ごとに指示を入力し直す必要があります。丁寧な敬語を使用する、箇条書きで整理する、3段落以内でまとめるなどの条件を毎回プロンプトに含める作業が発生します。

Gem のカスタム指示を使用すると、これらの条件を初期設定として組み込むことができます。 Gem を選択するだけで設定済みの役割、トーン、出力形式が自動的に反映されます。

また、 Gem には資料ファイルをアップロードして参照知識として保持させることも可能です(詳細は後述)。

無料版と有料版での利用可否

Gem 機能は無料版の Gemini では利用できません(2026年3月時点。 Google のプラン改定により変更される場合があります)。

個人ユーザーが Gem を作成および利用するには、 Google AI Pro プラン(旧 Google One AI Premium)などの有料プランに登録する必要があります。企業ユーザーの場合は、 Google Workspace 向けの Gemini(Gemini Enterprise 等)を契約することで利用可能になります(プラン名称や構成は変更される場合があります)。

精度、複雑な処理、文脈理解の深さが求められる業務においては、これらの有料プランが提供する高度なモデルと Gem 機能の組み合わせが重要です。

参照:Google AI のプラン


カスタム指示の書き方の基本

ペルソナとタスクおよびコンテキストと形式の解説

Google 公式ヘルプでは、効果的なカスタム指示には以下の4要素を含めることが紹介されています。

参照:カスタム Gem 作成のヒント

ペルソナ
Gem が担う役割を定義します。あなたはビジネスメールの専門家です、あなたは日英翻訳者として動作してくださいのように、役割と回答スタイルを明示します。

タスク
Gem に実行させる具体的な作業を伝達します。入力された文章をビジネス文書向けに書き直してください、提供されたテキストを自然な日本語に翻訳してくださいのように、実行内容を明確に定義します。

コンテキスト
背景情報や使用状況を定義します。対象は日本の企業で働くビジネスパーソンです、メールの相手は社外の取引先ですのように、利用状況を説明することで回答の精度が向上します。

形式
出力の形式や構成を指定します。件名と本文および署名の構成で出力してください、箇条書きで3点以内にまとめてくださいのように、期待する回答のフォーマットを具体的に指定します。

すべての要素を含める必要はありませんが、複数を組み合わせることで指示の精度が高まります。

効果的な指示文の作り方

適切な指示文を作成するための要点が3つ存在します。

第一に、具体的に記述することです。丁寧に書いてくださいという抽象的な指示よりも、敬語を使用し相手への配慮を示す表現を入れてくださいのように具体的な要件を言語化することで意図が正確に伝わります。

第二に、例を含めることです。期待する回答のサンプルを指示文に組み込むと、 Gemini が出力パターンを認識しやすくなります。件名はご確認のお願いとし、書き出しはお世話になっておりますとする、といった具体例を提示します。

第三に、制約を明示することです。競合他社の名前は出さないでください、文字数は200文字以内に収めてくださいのように、禁止事項や制限条件を明記することで回答のブレを抑制します。

初回から完璧な指示文を作成するのではなく、実際の出力結果を確認しながら不足している指示を修正し、反復的に精度を高める手法が実用的です。

Gemini を使って指示文を自動生成する方法

Gem の作成画面には Gemini を使用して指示を書き換える機能が実装されています。

この機能を使用すると、簡単なメモ書きから詳細で包括的なカスタム指示文が自動生成されます。メール作成の Gem が必要という短い入力から、4要素を含んだ詳細な指示文に変換されます。

生成された指示文はそのまま使用するのではなく、自社の業務要件に合わせて微調整を加えます。自動生成されたテキストをたたき台として活用し、必要な要件を追加および修正する手順が効率的です。


Gem の作成と設定手順

Gem の新規作成手順

Gem の作成は Gemini ウェブアプリから実行します。

  1. Gemini ウェブアプリにアクセスし、左側のメニューから Gem を表示をクリックします。
  2. 新しい Gem を作成または追加ボタンをクリックします。
  3. Gem の名前を入力します。メール作成アシスタントなど用途が判別できる名称を設定します。
  4. カスタム指示の入力欄に、ペルソナ、タスク、コンテキスト、形式を含む指示を入力します。
  5. 右側のプレビュー画面でテスト用のプロンプトを入力し動作を確認します。
  6. 出力結果に問題がなければ保存をクリックします。

作成した Gem は Gemini モバイルアプリや Google Workspace の Gemini サイドパネルからも利用可能になります。

参照:Gemini アプリで Gem を使用する

ファイルをアップロードして知識を追加する

Gem にはファイルをアップロードし、参照資料として組み込む機能があります。

対応しているファイル形式には PDF 、 Word 、テキストファイル、 Google ドキュメントなどが含まれます。詳細は Google 公式ヘルプをご確認ください。社内の業務マニュアル、製品仕様書、規則文書などをアップロードすることで、それらのドキュメントに準拠した回答を継続的に生成します。

自社の文書作成ガイドラインをアップロードした文書作成 Gem を構築すると、ガイドラインに沿った文章が自動生成されます。社内用語集をアップロードした翻訳 Gem を使用すれば、社内固有の表現を維持した翻訳が可能になります。

Google ドライブからファイルを追加する場合は、アクティビティの保存を有効化し、 Google Workspace を Gemini アプリに接続する必要があります。 Google ドライブから追加したファイルは、元ファイルを更新すると Gem の参照データにも最新版が自動的に反映されます。

プレビューと修正および保存の流れ

Gem の作成画面では、保存を実行する前に動作のプレビューが可能です。

プレビュー画面に実際に使用するプロンプトを入力し、意図した回答が生成されるかを確認します。指示文の意図が正しく反映されていない場合は、カスタム指示の入力欄に戻り修正を加えて再度テストを実行します。

プレビュー画面での操作のみでは Gem は保存されません。出力結果の確認が完了した後は、必ず保存ボタンをクリックして設定を確定させます。

保存後も Gem は随時編集可能です。実際の業務で使用する過程で不足している指示を発見した場合は、指示文を更新して段階的に改善を図ります。


業務別おすすめ Gem 設定例

ビジネスメールや文書作成向け

ビジネスメール作成は Gem の導入効果が顕著に表れる業務の一つです。

ビジネスメール作成 Gem のカスタム指示の例を以下に示します。

あなたは日本のビジネスシーンで使われるメールを作成する専門家です。
ユーザーが提供する内容や状況をもとに、適切な敬語を使ったビジネスメールを作成してください。
メールの対象は社外の取引先や顧客を想定します。
件名、挨拶、本文、結びの構成で出力してください。
文章は簡潔にまとめ、不必要な冗長表現は避けてください。

この指示を設定することで、担当者への納期変更の連絡メールを作成してと入力するだけで、適切な形式のメールが生成されます。

議事録作成向けには以下の指示が有効です。

あなたは会議の議事録を作成する専門家です。
ユーザーが入力した会議の内容や発言メモをもとに、整理された議事録を作成してください。
出力形式は日時、参加者、議題、決定事項、次回アクションの構成にしてください。
箇条書きを使用し、簡潔にまとめてください。

情報収集やリサーチ向け

調査およびリサーチ作業では、質問の構造を統一することで情報の整理精度が向上します。

業界リサーチ向け Gem のカスタム指示の例を以下に示します。

あなたはビジネスリサーチの専門家です。
ユーザーが指定したトピックについて、現状、課題、最新動向を整理して回答してください。
情報は根拠を示しながら説明し、不確かな情報は確認が必要と明示してください。
出力は概要、現状、課題、動向、まとめの構成とし、それぞれ200文字程度でまとめてください。

Gemini は Google 検索と連携してリアルタイム情報を取得できるため、最新動向の調査に適用できます。生成 AI の回答には事実誤認が含まれる可能性があるため、重要な情報は必ず一次情報源で検証するプロセスを組み込みます。

翻訳や語学学習向け

翻訳用の Gem を設定する際は、翻訳のスタイルや専門性を指示に組み込むことで品質が安定します。

ビジネス日英翻訳 Gem のカスタム指示の例を以下に示します。

あなたはビジネス文書の日英翻訳を専門とする翻訳者です。
ユーザーが提供する日本語テキストを、自然でフォーマルなビジネス英語に翻訳してください。
直訳ではなく、英語圏のビジネス慣行に適合した自然な表現を使用してください。
専門用語は業界標準の英語表現を適用してください。
翻訳の実行後、重要な表現の注釈があれば追加してください。

語学学習向けには、ユーザーのレベルに合わせた説明スタイルを設定します。

あなたは英語学習をサポートするコーチです。
ユーザーの英文を確認し、文法、語彙、表現の改善点を指摘してください。
中級者レベルを想定し、専門的すぎない言葉で説明してください。
修正した文と修正した理由を対比して示してください。

企業での活用と発展的な使い方

チームで共有する Gem の整備

作成した Gem はチームメンバー間で共有して運用できます。

チームで共通の Gem を使用することで、メール、報告書、提案資料などの業務文書のトーンやフォーマットを均一化できます。担当者が変更されても同等の品質を維持でき、業務の属人化を解消します。

企業で Gem を整備する際は、用途別の Gem ライブラリの構築が有効です。社外向けメール作成、社内報告書作成、技術仕様書作成など、主要な文書作成プロセスを網羅する Gem を配備することで、組織全体の生成 AI 利用率が向上します。

既存の指示文が最適であるかを定期的に検証することも重要です。実際の運用から得られた改善点を蓄積し、継続的に指示文を最適化する体制を構築することで実用性が確保されます。

Google Workspace との連携活用

Google Workspace 向けの Gemini アドオンを利用することで、 Gemini と Google Workspace アプリケーションが統合されます。

作成した Gem は、 Gmail や Google ドキュメントの Gemini サイドパネルからも利用できます。文書作成 Gem を選択して Google ドキュメント内で文章の生成や編集を実行する運用が可能です。

Google ドライブのファイルを Gem の知識ソースとして連携すると、ファイルが更新されるたびに Gem の参照情報にも最新の内容が反映されます。社内ガイドラインや規程の最新版を常に参照できる状態が維持されます。

より高度な業務自動化を要件とする場合は、 Google Cloud 上の Vertex AI を活用した業務システムへの Gemini 統合を適用します。 RAG アーキテクチャを構築することで、社内の独自ドキュメントを参照して精度の高い回答を生成するセキュアなシステムを実現します。


最後に

Gemini の Gem は、日常業務における反復作業を大幅に削減する実用的な機能です。

単一の Gem を作成して運用を開始することで、毎回のプロンプト入力の省略による効率化を実測できます。ただし、 Gem を含む生成 AI の出力には事実と異なる内容が含まれる可能性があるため、業務で使用する際は出力結果の確認を習慣化することが大切です。実際の運用を通じて指示文を改善し、自社の業務に最適化していくプロセスが生成 AI の活用スキルの向上に直結します。

企業で本格的に導入する際は、チーム全体で利用可能な Gem ライブラリの整備と、定期的な見直し体制の構築が重要です。

cloudpack では、 Gemini の導入および活用支援を提供しています。 Gem の設定、プロンプト設計、 Google Workspace との連携から、 Vertex AI を活用した高度な業務 AI システムの構築まで、生成 AI の業務適用を包括的にサポートします。組織への生成 AI 導入をご検討の際は、 cloudpack までご連絡ください。