画像生成 AI アプリで顧客体験価値を向上!32台の iPad が連動したインタラクティブディスプレイを開発アイレット株式会社のクラウドを活用した導入事例

掲載日:2025年3月28日
課題
- iPad に導入できる画像生成 AI アプリの開発を目指していた。
- 展示会などで来場者の注目を集めるインタラクティブな体験の提供方法を模索していた。
対応と結果
- イベントディスプレイ用 iPad アプリに機能を追加し、Stable Diffusion・ControlNet を用いた画像生成を実現。
- 体験型コンテンツによるイベントディスプレイで顧客体験価値が向上した。
アイレットは、画像生成 AI を用いた iPad アプリを開発し、撮影された写真から世界のお祭りにトリップしたような画像を生成する、インタラクティブなコンテンツ企画を実現しました。本アプリは、2024年8月1日〜2日に開催された「Google Cloud Next Tokyo ’24」にて、32台の iPad を同期させた大型イベントディスプレイに機能追加し展示。体験型コンテンツとして大きな反響を呼びました。本プロジェクトの背景にある課題や目的、具体的な開発内容をご紹介します。
生成 AI の可能性を直感的に体感できる。技術力とクリエイティビティを生かしたコンテンツ開発に挑戦
近年、生成 AI 技術の進化が加速し、多くの企業がこの技術を活用した新しいサービスの開発を進めています。しかし、技術的な強みを持っているだけでは、人々の関心を引きつけることはできません。「AI を活用して何ができるのか?」を直感的に伝えるアイデアやクリエイティビティが求められています。
アイレットでは「Google Cloud Next Tokyo ’24」へのブース出展に向けて、生成 AI を活用した開発力と技術力、クリエイティビティを PR しながら、来場者に楽しんでもらえるコンテンツを提供したいと考えていました。そこで、以前開発したイベントディスプレイ用 iPad アプリに画像生成 AI 機能を追加し、インタラクティブな体験型コンテンツを提供することを計画。ユーザーが iPad の前に立ち、撮影するだけで、まるで世界のお祭りに参加したかのような画像を生成し、データとして持ち帰ることができる体験型コンテンツの開発を目指しました。
緻密なプロンプトチューニングによる高精度な画像生成と、Shader によるリッチな演出で体験価値を向上!
画像生成 AI には Stable Diffusion を採用し、拡張機能の ControlNet で撮影された画像からポーズや輪郭、顔の特徴を捉えたデータを抽出。その情報をもとに、ユーザーの姿を世界のお祭りの雰囲気に変換する仕組みを構築しています。画像生成にあたっては人物と背景の境界を正確に捉えることが重要になるため、ControlNet のモデル選定とチューニングを実施。特に、人物と背景を自然に分離するため、深度情報を活用した境界線抽出を導入したことで、背景を削除しつつも人物の特徴をできるだけ保持し、よりリアルで違和感のない画像生成を実現しました。

また、お祭りの世界観を忠実に再現するため、事前に各国の祭りに関する情報を徹底的にリサーチ。衣装や化粧、装飾品、背景、またその国ならではの特徴などを理解し、プロンプトに落とし込んで画像生成を繰り返しました。検証を重ねながら再現の精度を高めるため、背景の選定は行動自体に特徴のあるお祭りよりも、服装や装飾品、雰囲気が分かりやすいものを優先した結果、よりリアルで一貫性のある画像生成が可能になりました。
さらに、生成 AI のパフォーマンス向上にも取り組みました。初期段階では画像生成に約4分を要していましたが、Compute Engine のインスタンスを2つ使用し、並列処理を実行。その結果、4枚の画像をスムーズに生成できるようになり、処理時間の短縮に成功しました。また、GPU のリソースを増強し、画像生成のスピードを向上させました。
加えて、ユーザーの体験価値を向上させるため、Shader を活用したインタラクションの強化にも注力。一般的なスマートフォンアプリのアニメーションでは表現しきれない動きを表現し、イベントディスプレイならではのリッチな演出を可能にしました。たとえば、画面をタップすると、その位置を中心に波紋が広がるエフェクトを導入。画像生成中のローディング画面では、ページをパラパラとめくるような画面遷移を取り入れ、単なる待機時間ではなく、視覚的にも楽しい時間となるように工夫しました。背景にはダイナミックで躍動感のあるアニメーションを追加し、まるでお祭りの熱気がディスプレイから伝わるような演出を実現。これにより、ユーザーは画像生成のプロセスそのものを楽しみながら、AI の力を実感できる体験を得ることができます。
イベントごとでのコンテンツの切り替えや、SNSでの共有も可能な設計にし、汎用性の高いアプリへ
会場では QR コードを活用し、生成された画像をユーザーがダウンロードできる仕組みを実装。ユーザーはスマートフォンを使って画像を保存できるだけでなく、SNS での共有も可能になりました。この仕組みにより、イベント会場だけでなく、オンライン上でも生成 AI の体験を広めることができます。
また、イベントの運営面にも配慮し、アプリの設定画面からイベント ID を変更できる仕組みを導入。これにより、イベントごとでのコンテンツ切り替えが容易になり、それぞれの展示で異なる体験を提供できるようになりました。また、会場の撮影スペースに応じてカメラのズームをリアルタイムで調整できる機能を追加した他、コントローラーでの輝度・音量・カウントダウン時間の調整も可能となっています。
なお、セキュリティ面では、アクセス制限機能を実装し、AI に使用するデータが外部へ流出しないよう対策を講じています。

実際にイベント会場で展示した際は、来場者から大きな反響があり、生成された画像を喜んで受け取る姿や、楽しみに列を作る光景が見られました。また、技術に興味を持つ人も多く、仕組みに関する質問も寄せられました。結果として、画像生成 AI の導入を検討する企業様から多数の問い合わせをいただくことができました。
こうした体験型コンテンツはイベントや展示会だけでなく、アパレル業界でのバーチャル試着や観光業での地域体験コンテンツなど、様々な分野への応用も期待できます。
アイレットでは、最新技術とクリエイティビティを融合させたイベントコンテンツの開発や、企業の生成 AI 活用をサポートしています。AI を活用した体験型コンテンツやエンターテインメント要素のあるデジタルコンテンツの導入を検討されている方は、ぜひご相談ください。
システム構成図

使用プロダクト
◾️Google Cloud
・Cloud Run functions
・Compute Engine
・Cloud Storage
・Cloud Load Balancing
◾️Flutter
◾️WebSocket
案件名 | 画像生成 AI アプリで顧客体験価値を向上!32台の iPad が連動したインタラクティブディスプレイを開発 |
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クライアント | アイレット株式会社 |
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