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生成 AI とチャットツールを連携し、経理業務を効率化!Google Cloud を活用した会計エージェント開発アイレット株式会社のクラウドを活用した導入事例

生成 AI とチャットツールを連携し、経理業務を効率化!Google Cloud を活用した会計エージェント開発

掲載日:2026年2月2日

課題

  • 会計システムへの登録業務において、請求書から適切な勘定科目を判断する工程が担当者の経験や解釈に依存しており、品質にばらつきが生じていた。
  • 経理業務が属人化しやすく、担当者不在時の対応や引き継ぎに課題があった。
  • 1件あたり約10分かかる判断・システム登録作業が月に約300件発生しており、2名体制での対応に業務負荷がかかっていた。

対応と結果

  • Google Cloud の Agent Development Kit と Vertex AI を活用し、Slack 上で動作する AI エージェントを開発。1件あたりの処理時間を約10分から約3分へ短縮。
  • RAG を用いて社内の会計マニュアルを参照し、根拠に基づいた勘定科目を提案する仕組みを構築。
  • 業務の標準化により、経験の浅い担当者でも適切な処理が可能となり、教育コストや属人化の低減に貢献。

アイレットは、経理部門の会計システム登録業務における負荷と属人化を解消するため、Google Cloud の生成 AI 技術を活用したチャットツール連携型 AI エージェントを開発。勘定科目の判定・レビューから会計ソフトへの登録までを支援するシステムを構築し、業務の標準化と効率化を実現しました。

バックオフィス業務の DX を加速。属人化と業務負荷の課題解決に向けた AI エージェント開発

アイレット株式会社(以下、アイレット)の経理部門では、請求書や稟議書から適切な勘定科目を判断し、会計システムへ登録する業務が日常的に発生しています。この判断業務は担当者の経験や解釈に依存するため、品質のばらつきや属人化が課題となっていました。また、月に約300件発生する登録作業は1件あたり約10分を要し、2名体制での対応による業務負荷も問題となっていました。

そこで、これらの課題を解決するため、Google Cloud の生成 AI 技術を活用したチャットツール連携型 AI エージェントを開発。普段から使い慣れているインターフェース上で完結するため、新しいツールの学習コストが不要である点が大きな特徴です。

本システムでは、担当者が請求書の PDF ファイルをチャットツールにアップロードし、「勘定科目を教えてください」と入力するだけで、AI エージェントが即座に適切な勘定科目を提示します。これまで担当者が手作業で調べていた項目を、AI エージェントが瞬時に判断することで、業務効率の大幅な向上につながっています。

Agent Development Kit と Vertex AI で実現。マルチエージェント構成による高精度な勘定科目判定

システム構成として、ユーザーインターフェースには、社内で広く利用されている Slack を採用。新たなツール導入による運用負荷を抑え、既存の業務フローに無理なく組み込める構成としました。バックエンドは Cloud Run 上で Agent Development Kit ベースの Python アプリケーションを稼働させています。AI モデルには Vertex AI(Gemini 2.5 Pro)を使用し、Vertex AI Search にて社内マニュアルを検索・参照する仕組みを構築しました。会計ツールとは API で外部連携し、データの登録機能を実現。また、インフラ管理には Terraform を採用し、コンテナ化には Docker を使用しています。

勘定科目の判定には、RAG(検索拡張生成)を用いて、Markdown 形式に変換した社内の会計マニュアルを AI が参照し、根拠に基づいた勘定科目を提案する仕組みを構築しました。単に回答を出すだけでなく、社内マニュアルのどの部分に基づいた判断かを提示することで、担当者が安心して利用できる設計となっています。この「根拠の提示」機能により、生成 AI の判断に対する信頼性を確保し、担当者が自信を持って業務を進められる環境を整えています。

また、精度向上のために、メインとなる「ルートエージェント」と2つの「サブエージェント」からなるマルチエージェント構成を採用。生成 AI を単一のプロンプトで動作させるのではなく、ルートエージェントがユーザーの入力内容をもとに処理内容を判断し、適切なサブエージェントへタスクを割り振る役割を担っています。

エージェントの仕組み
エージェントの仕組み

ルートエージェントは、freee API の認証情報を含む Tools を参照し、会計ツールへの登録処理を担当。OAuth 2.0 による認証方式の特性を踏まえ、登録処理はルートエージェントに集約する設計としました。

サブエージェントのうち一方は、社内マニュアルを参照して勘定科目を判定する役割を担い、もう一方のレビュー用サブエージェントは、社内マニュアルに加えて一般的な会計知識も参照し、判定結果を多角的にチェックします。これにより、回答精度の向上と判断の妥当性確保を両立しています。

(画面イメージ)勘定科目判定
(画面イメージ)勘定科目判定

(画面イメージ)勘定科目レビュー
(画面イメージ)勘定科目レビュー

本プロジェクトでは、チャットツールとの統合においても複数の課題がありました。Slack には「3秒タイムアウト」という制約があり、3秒以内にレスポンスを返さない場合はリトライが発生してしまいます。そこで、ミドルウェアを追加し、リトライの発生を防止。また、レビュー機能の実現には前回の会話を参照する必要があるため、チャンネルごとの会話履歴を保持することで連続質問に対応しています。さらに、請求書 PDF をアップロードした際のファイル変換処理(バイナリ変換)も実装しました。

会計ツールとの連携については、Slack からの直接登録も技術的には可能ですが、セキュリティを考慮し、ブラウザ上で操作可能な ADK Web 上で会計登録まで完結できる形で実装。運用環境に合わせた調整を実施しています。また、現在の業務では、Slack で勘定科目の確認・レビューを行ない、内容を目視で確認した上で会計ツールへの登録を進める運用となっています。

セキュリティと拡張性を両立。他の会計ソフトへの展開も可能

本システムは会計情報を扱うため、セキュリティ面には特に注力しています。会計ツールとの連携においては、非公式なツールは使用せず、API を利用。アクセストークンとリフレッシュトークンを用いたトークンライフサイクル管理を実装し、不正アクセスのリスク期間を最小化しています。

チャットツールに付与する権限は機能実現に必要な範囲のみに絞り込み、余計なデータ読み取りを行なわない設定としました。これにより、インシデント発生時における被害範囲を縮小しています。なお、Cloud Run のサービスアカウント権限も必要最小限に絞り、不正なリソース操作を防止。機密情報は環境変数で管理し、コード内にハードコーディングしないことで情報漏洩のリスクを排除しています。

また Agent Development Kit では、実行可能な操作を定義済みの「Tools」に限定することで、意図しないコマンド実行やデータアクセスのリスクを物理的に遮断。ルートエージェント/サブエージェントなどの役割分割によって機能を独立させ、誤動作時の影響範囲を限定する設計としています。

さらに本システムは、API が提供されている、もしくは MCP サーバーの構築が可能な SaaS 製品との連携も可能。会計ツールに限らず、周辺業務システムとの連携や運用に合わせた拡張を視野に入れた構成としました。

生成 AI は「チャットボット」としての活用だけでなく、API 連携と組み合わせることで「業務代行エージェント」として実務に組み込むことが可能です。特にバックオフィス業務(経理・総務など)は、生成 AI の導入効果としての時間短縮、心理的負担の軽減が非常に分かりやすく現れる領域です。バックオフィス業務の効率化や社内 DX を検討されている方、生成 AI を実業務に組み込みたいと考えている方は、ぜひお気軽にアイレットへご相談ください。

システム構成図

システム構成図

使用プロダクト

◼︎Google Cloud
 ・Agent Development Kit(ADK)
 ・Vertex AI(Gemini 2.5 Pro)
 ・Vertex AI Search
 ・Cloud Run

◼︎その他
 ・Slack
 ・freee 会計API
 ・Terraform
 ・Docker

案件名 生成 AI とチャットツールを連携し、経理業務を効率化!Google Cloud を活用した会計エージェント開発
クライアント アイレット株式会社

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