サポートデスク向け AI エージェントで対応時間を約17%短縮!回答の生成と検品を分けた二層構成で生成 AI の回答精度を向上KDDIアイレット株式会社のクラウドを活用した導入事例
掲載日:2026年9月30日
課題
- 技術的な問い合わせへの初動対応(ドキュメント調査、回答方針の決定、回答案の作成)をすべて担当者が手作業で行なっており、1件あたりの対応時間が長くなっていた。
- お客様への高品質な回答提供において、担当者の知識や経験によってバラつきがあった。
- お客様へ常に正確で信頼できる情報をご案内するため、担当者個人だけでなくグループ内で入念にレビューする運用が必要だった。
- 生成 AI で回答案を作るほど、事実と異なる回答(ハルシネーション)の確認や根拠となる出典との突き合わせが増え、工数がかかっていた。
- お客様へ直接回答可能な問い合わせか、AWS サポートへの確認が必要な問い合わせかの判断を、担当者が都度行なっていた。
対応と結果
- 調査と回答案の作成を AI エージェントが担い、担当者がレビューに専念できる体制を構築。その結果、問い合わせ1件あたりの対応時間を平均4.2時間から3.5時間へ約17%短縮。
- 担当者の習熟度によらず一定の基準で回答案を提示。AWS 公式ドキュメント、社内 Slack、Backlog、過去のサポート対応の4つの情報源を並列で横断検索し、出典付きで生成。
- お客様への回答文と AWS サポートへの起票文の作成をいずれも自動化。専用の判定エージェントが分岐を見極めることで、担当者がゼロから文章を作成する負担を軽減。
- 回答内容を確認する負担を軽減。生成した回答案を別の生成 AI が全件検品する仕組み(LLM-as-a-Judge)により、担当者が確認すべき箇所と順番を提示。
- 改善サイクルを仕組み化。担当者による OK / NG の評価データを蓄積し、判定基準の見直しと回答生成の改善に活用。
KDDIアイレットが提供するクラウド導入・活用の総合支援サービス「cloudpack」の「AWS 請求代行サービス」では、オペレーターがお客様からの技術的な問い合わせに対応しています。
本プロジェクトでは、問い合わせ対応の初動となる調査と回答案の作成を担う AI エージェントを構築し、担当者が最終確認と判断に集中できる体制を実現しました。
サポート対応の属人化を解消。公式ドキュメントの調査と一次回答の作成を AI エージェントが支援
クラウド導入・活用の総合支援サービス「cloudpack」の「AWS 請求代行サービス」では、オペレーターがお客様からの技術的な問い合わせに対応しています。2026年2月には一次窓口として AI チャットボットを導入し、定型的な問い合わせへの対応を自動化しました。
関連事例:AI チャットボットによる一次対応の自動化。社内ナレッジとマルチモデル設計で 24/365 の高精度回答を実現
一方、チャットボットで解決しない技術的な問い合わせは担当者へ引き継がれ、調査・回答方針の決定・一次回答案の作成は人手で行なっていました。中でも時間がかかっていたのが初動の調査です。お客様への案内には AWS 公式ドキュメントの記載を根拠として示す必要があり、担当者がドキュメントを読み込んで該当箇所を確認する作業が発生していました。
また、品質の面にも課題がありました。AWS のサービス仕様は更新が速く、常にお客様へ高品質な回答を提供するための調査プロセスが、担当者の高いスキルや経験に依存していました。さらに、お客様へ常に正確で信頼できる情報をご案内するため、アサインされた担当者だけでなくグループ内で入念にレビューを行なう運用も必要でした。
こうした初動の負荷と品質のバラつきを解消する手段として、生成 AI による回答案の作成を検討しました。
ただし、生成 AI で回答案を作れば作るほど、その回答が正しいかを確かめる作業が増加。もっともらしいものの事実とは異なる回答(ハルシネーション)のチェックや、根拠となる出典との突き合わせを人手だけで行なうには時間がかかります。初動を速くするだけでなく、回答を安心して使える形にするところまでが、本プロジェクトの要件となりました。
AI エージェントの二層構成で生成 AI の回答精度を向上。ハルシネーション対策を仕組みとして実装
今回は、KDDIアイレットが全社導入している Gemini Enterprise を活用し、サポート業務を支援する AI エージェントを構築しました。1つの生成 AI にすべての処理を任せるのではなく、役割に特化した複数の生成 AI が連携する「マルチエージェント」の仕組みを採用しています。具体的には、AI エージェント全体を「回答を作るエージェント」と「それを検品するエージェント」の2つに分けて構築。いずれも Google Cloud、Zendesk、Slack の同一基盤上で稼働します。

サポートデスクAI
生成レイヤーは、Gemini を用いたマルチエージェント構成です。司令塔となるスーパーバイザーのもとで、サポート契約の対応範囲かどうかの判定、ナレッジの検索、AWS 公式ドキュメントを根拠に回答できるかどうかの整合性判定、回答文および AWS サポートへの起票文の作成、生成物の査読を、役割を分けたサブエージェントが分担します。
複数の処理を単一の生成 AI に任せず役割を分けたことで、エージェントごとのプロンプトが短くなり、精度の安定と修正範囲の限定につながっています。検索担当は、AWS Knowledge MCP Server 経由の AWS 公式ドキュメントに加え、社内 Slack、Backlog、過去のサポート対応の4つのナレッジを並列で横断検索。参照するデータは読み取り専用とし、生成された回答案・起票文・調査要約・回答方針は Slack へ自動投稿されます。
ハルシネーション対策は、運用ルールではなく仕組みとして実装しました。生成 AI が書ける情報を問い合わせ本文の事実と検索で得られた根拠に限定し、「一般的には」「通常は」といった根拠のない補完表現はプロンプトで禁止にしました。生成後には生成 AI 自身が査読し、指摘があれば最大3周まで作り直すループを構成。規定回数内に承認へ至らなかった場合は、どこが直りきっていないかを明記した上で出力し、品質を担保できないドラフトがそのまま担当者に流れることを防いでいます。

システムと人の役割分担
品質保証レイヤーでは、生成レイヤーが作った回答案を別の生成 AI に評価させる LLM-as-a-Judge を採用しました。
回答が引用している出典ページを丸ごと取得し、回答の主張を1つずつ出典と突き合わせて、記載の有無を判定。判定結果は Slack に届きます。担当者が見るのは、回答案をどう扱うかを示す確認分類(「送信候補」「要確認」「修正推奨」など5種類)、検出された問題の件数、その分類になった理由の3点です。
出典の一部や要約だけで採点すると、実際には書かれている内容まで「根拠なし」と誤判定してしまいます。そのため、出典ページを全文取得し、回答の主張を1つずつ照らし合わせる方式にしています。判定は送信の可否を決めるものではなく、担当者が確認する順番と箇所を示します。


品質保証レイヤー(回答を検品する AI)による精度判定の結果

二層の稼働により、問い合わせ1件あたりの対応時間は AI エージェント導入前の平均4.2時間から3.5時間となり、約17%短縮しています。担当者の役割は、ゼロから調査して回答を作成する作業から、生成 AI の回答案と検品結果を確認して判断する作業へと変わりました。回答案は出典付きで提示され、全件が同じ基準で検品されます。担当者は回答案が案内に使えたかを OK / NG で記録し、記録は BigQuery に蓄積して判定基準の見直しと回答生成の改善に利用しています。
生成 AI に回答を作らせるところまでは短期間で実現できますが、業務で使う段階では、その回答の信頼性をどう高めるかが問われます。KDDIアイレットでは、各クラウドのマネージドサービスを活用し、回答を作る仕組みと、その回答を確かめる仕組みの両方を含めた AI エージェントの設計・構築を支援しています。生成 AI の業務活用を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
システム構成図

使用プロダクト
◼︎Google Cloud
・Gemini Enterprise Agent Platform(旧 Vertex AI)
・Agent Search(旧 Vertex AI Search)
・Cloud Run
・BigQuery
◼︎その他
・Zendesk
・Slack
・Backlog
| 案件名 | サポートデスク向け AI エージェントで対応時間を約17%短縮!回答の生成と検品を分けた二層構成で生成 AI の回答精度を向上 |
|---|---|
| クライアント | KDDIアイレット株式会社 |