Amazon Bedrock エージェント(Agents for Amazon Bedrock)入門|複雑なタスク自動化の実装方法と活用事例
AI 技術の進化により、複雑な業務を自動化する AI エージェントが注目されています。
しかしながら、
- Bedrock エージェント(Agents for Amazon Bedrock)とは何か、どのような機能なのかわからない
- どのようにエージェントを構築するか、実装方法が不明
- 具体的にどのような業務に活用できるか、事例を知りたい
といった悩みを抱えている方も多いのが現状です。
そこで本記事では、Bedrock エージェントの基本概念から、主要機能、構築方法、動作フロー、活用事例、ベストプラクティスまで、実践的な情報を解説します。
Amazon Bedrock エージェントとは
Amazon Bedrock エージェント(Agents for Amazon Bedrock)は、複雑なタスクを自律的に実行する AI エージェントを構築するための機能です。ここでは、エージェントの基本概念について解説します。
AI エージェントの概念
AI エージェントは、人間の指示を理解し、自律的にタスクを実行するシステムです。
自律的な実行
エージェントは、与えられた目標を達成するために、自律的に行動します。人間が各ステップを指示する必要はありません。
ゴールだけを伝えれば、エージェントが必要なアクションを判断し、実行します。途中で問題が発生した場合も、別のアプローチを試みます。
この自律性により、複雑なタスクを人手を介さずに処理できます。24時間稼働し、人間が対応できない時間帯もサービスを提供できます。
マルチステップ処理
エージェントは、複数のステップを含むタスクを処理できます。情報の収集、分析、判断、アクションの実行を、一連の流れとして実施します。
各ステップの結果を次のステップに活用します。前のステップで得た情報を基に、次のアクションを決定します。
単純な質問応答を超えて、業務プロセス全体を自動化できます。人間が通常行なう一連の作業を、エージェントが代替します。
オーケストレーション
エージェントは、タスクを自動的にオーケストレーション(調整・管理)します。タスクの分解、各ステップの計画、実行順序の決定を自動的に行ないます。
複数のツールや情報源を組み合わせて使用します。どのツールをどの順序で使用するかを、エージェントが判断します。
結果を統合し、最終的な回答を生成します。複数のアクションの結果をまとめて、ユーザーに提示します。
Bedrock エージェントの特徴
Bedrock エージェントには、いくつかの重要な特徴があります。
自然言語での指示
エージェントは、自然言語での指示を理解します。プログラミングや専門的な知識がなくても、日常的な言葉で指示を与えられます。
「来週の会議室を予約して」「この月の売上レポートを作成して」といった指示を、エージェントが理解し、実行します。
指示の意図を解釈し、必要なパラメータを推測します。曖昧な指示でも、文脈から適切な行動を判断します。
複雑なタスクの処理
単純なタスクだけでなく、複雑な業務プロセスも処理できます。条件分岐、反復処理、例外処理を含むタスクにも対応します。
「在庫が少ない商品を確認し、発注が必要なら発注して、担当者に通知する」といった、複数の条件と判断を含むタスクを実行できます。
人間が行なう業務の多くを自動化できる可能性があります。定型業務から、判断を伴う業務まで、幅広く対応します。
外部ツールとの統合
エージェントは、外部のツールや API を呼び出せます。データベース、業務システム、Web API など、様々なシステムと連携します。
AWS Lambda 関数を呼び出すことで、任意の処理を実行できます。既存のシステムやサービスとシームレスに統合できます。
Knowledge Bases for Amazon Bedrock と統合することで、自社の情報を活用できます。製品情報、社内文書、FAQ などを参照しながら、正確な回答を生成・提示します。また、最新機能の Code Interpreter(コード解析・実行)や、長期的な文脈を保持する Memory 機能も活用可能です。
エージェントの主要機能
Bedrock エージェントの主要な機能について解説します。
タスクの分解と計画
エージェントは、与えられたタスクを分解し、実行計画を作成します。
ゴールの理解
ユーザーの指示から、達成すべきゴールを理解します。指示の意図を解釈し、何を実現すべきかを明確にします。曖昧な指示でも、文脈や過去のやり取りから、ゴールを推測します。不明な点がある場合は、確認の質問をすることもできます。
ステップへの分解
ゴールを達成するために必要なステップに分解します。大きなタスクを、実行可能な小さなタスクに分割します。各ステップの依存関係を理解します。あるステップの結果が、次のステップの入力になる場合を認識します。
実行計画の作成
ステップの実行順序を決定します。並行して実行できるステップ、順次実行すべきステップを判断します。必要なツールやリソースを特定します。各ステップで使用すべき Action Group や Knowledge Base を選択します。
Action Groups
Action Groups は、エージェントが実行できるアクションを定義する仕組みです。
アクションの定義
実行可能なアクションを定義します。「予約を作成する」「在庫を確認する」「メールを送信する」など、業務に必要なアクションを指定します。各アクションには、説明を付与します。エージェントがアクションを選択する際、この説明を参考にします。明確な説明により、適切なアクションが選ばれやすくなります。
API スキーマ
OpenAPI スキーマを使用して、アクションのインターフェースを定義します。パラメータ、戻り値、エラー処理などを明確に記述します。スキーマにより、エージェントがアクションを正しく呼び出せます。必要なパラメータを理解し、適切な値を渡します。
Lambda 統合
各アクションは、AWS Lambda 関数として実装されます。Lambda 関数内で、実際の処理を記述します。データベースへのアクセス、外部 API の呼び出し、業務ロジックの実行など、任意の処理を実装できます。既存のシステムとの統合も容易です。
Knowledge Base 統合
エージェントは、Knowledge Bases for Amazon Bedrock と統合できます。
自社情報の活用
製品マニュアル、FAQ、社内文書など、組織の情報を活用できます。一般的な知識だけでなく、組織固有の情報に基づいて回答します。エージェントが自社の製品やサービスに関する質問に、正確に答えられます。顧客対応の品質が向上します。
RAG による回答生成
RAG(Retrieval-Augmented Generation)により、関連する情報を検索し、それを基に回答を生成します。検索した情報を参照しながら回答するため、正確で詳細な情報を提供できます。単なる推測ではなく、根拠のある回答を生成します。
ツールの呼び出し
エージェントは、様々なツールを呼び出せます。最新の Guardrails for Amazon Bedrock を適用すれば、ハルシネーション(嘘の回答)の抑制や不適切なコンテンツのフィルタリングも可能です。
外部 API の利用
Web API を呼び出して、外部サービスの機能を利用できます。天気情報、地図情報、決済処理など、様々なサービスと連携できます。API の認証、エラーハンドリング、リトライロジックなどを実装することで、安定した統合を実現します。
データベースアクセス
データベースにアクセスして、情報の取得や更新ができます。顧客情報、在庫情報、注文情報など、業務データを扱えます。適切な権限管理により、安全にデータベースを操作します。必要最小限の権限のみを付与し、セキュリティを確保します。
AWS サービス連携
他の AWS サービスと連携できます。Amazon S3 へのファイル保存、Amazon SNS での通知送信、Amazon DynamoDB へのデータ格納など、様々なサービスを活用できます。AWS SDK を使用して、プログラムから各サービスを呼び出します。サービス間の連携により、高度なワークフローを構築できます。
エージェントの構築方法
Bedrock エージェントを構築する手順について解説します。
基盤モデルの選択
エージェントが使用する基盤モデルを選択します。Claude 3.5 Sonnet などの高度な推論能力を持つモデルが推奨されます。モデルの能力により、エージェントの判断精度が変わります。複雑なタスクを扱う場合、高度なモデルを選択します。
IAM ロールの設定
エージェントが実行する際に使用する IAM ロールを作成します。Amazon Bedrock、AWS Lambda、Knowledge Bases へのアクセス権限を付与します。最小権限の原則に従い、必要な権限のみを付与します。セキュリティリスクを最小化します。
Action Groups の作成
実行したいアクションをリストアップします。業務プロセスを分析し、どのようなアクションが必要かを特定します。各アクションに名前と説明を付けます。また、OpenAPI 形式でインターフェースを定義し、対応する Lambda 関数内で業務ロジックとエラーハンドリングを実装します。
Knowledge Base の設定
既存の Knowledge Base を選択するか、新規に作成します。指示の記述において、エージェントがどのような場合に検索すべきか、どのような情報を優先すべきかを記述します。明確な指示により、エージェントが適切なタイミングでナレッジベースを活用します。
エージェントの設定
エージェントの役割、振る舞い、制約を「Instructions(指示書)」として記述します。あわせてタイムアウトや最大ステップ数などのパラメータを調整します。複雑なタスクには、長いタイムアウトと多いステップ数を設定します。
テストとデプロイ
AWS マネジメントコンソールからテストを行います。エッジケースやエラー発生状況も確認してください。なお、評価指標として解決性・有用性・関連性などを定義し、Ragas などのフレームワークを用いて定量的に評価を行うのがベストプラクティスです。変更時はエイリアスとバージョン機能を活用し、段階的にデプロイします。
エージェントの動作フロー
エージェントがタスクを実行する際の流れについて解説します。
ユーザー入力の受付
自然言語での指示を解析し、意図と文脈を理解します。指示から日時や目的、必要なアクションを抽出し、達成すべきゴール(例:会議室の予約完了)を設定します。情報不足の場合は確認の質問を行います。
タスクの計画
ゴールを、実行可能なサブタスク(例:空き状況確認、予約作成、通知送信)に分解します。依存関係を考慮し、論理的な順序を決定します。
アクションの実行
Action Group から適切なツールを選択し、パラメータ(日付変換等)を決定して実行します。Lambda 関数が実行され、結果を評価します。エラー発生時はリトライや代替手段を試みます。
結果の統合
複数のステップの結果をまとめ、実行内容を要約します。自然な言葉で結果を説明し、必要に応じて「プロジェクターも必要ですか?」といった追加の提案を含めて最終的な回答を生成します。
活用事例
予約管理システム
予約変更依頼の処理、空き状況の確認、リマインダー通知の自動送信などを一括で行います。予約システムやカレンダー、通知システムを統合的に操作します。
カスタマーサポート
自動での問い合わせ対応、注文履歴や配送状況の検索、エージェントで解決できない場合のサポートチケット作成などを自動化し、品質を向上させます。
データ分析と報告
最新の Code Interpreter を活用し、複数データソースからの収集、集計・トレンド分析の実行、およびグラフを含む包括的なレポート生成・関係者配信を自動化します。
業務自動化
複雑なルールの承認フロー自動化、非構造化データ(PDF等)からのデータ入力、定期的なバックアップやレポート作成などの定型業務を確実に実行します。
ベストプラクティス
Bedrock エージェントを効果的に活用するためのベストプラクティスについて解説します。
明確な指示の作成
エージェントの役割(Role)の定義、守るべきルールの明示、そして良い例・悪い例の提供(Few-shot)を行い、振る舞いの一貫性を高めます。
エラーハンドリング
アクション失敗時の例外処理や一時的な障害に対するリトライロジックを実装します。ユーザーには失敗理由と「次に何をすべきか」を分かりやすく伝えます。
インフラ・可用性の確保
本番環境では マルチAZ構成 を採用し、高い稼働率と耐障害性を確保するのが鉄則です。また、事業継続の観点から RTO(目標復旧時間) と RPO(目標復旧時点) を明確に定義してください。
セキュリティ・データ保護
権限の最小化に加え、仮想デスクトップ(VDI) を通じたアクセスやログ監視などの物理的な漏洩防止策を講じます。ネットワーク面では、専用線(AWS Direct Connect)と VPN を組み合わせ、インターネットを経由しない閉域網内でさらに暗号化を行う多層防御を検討してください。
パフォーマンス最適化と運用監視
ツールを必要最小限に絞り、Amazon CloudWatch メトリクス等で応答時間やエラー率を監視します。精度維持のために Ragas 等のツールで継続的に評価・改善を行います。
コストと考慮事項
料金
基盤モデルのトークン使用量(通常の API 呼び出しより多くなる傾向)、Knowledge Bases の検索・ストレージ、Lambda の実行時間に応じて課金されます。適切なリソース設計(検証環境のシングルAZ化等)によりコストを最適化することが重要です。
制限事項
タイムアウト、最大ステップ数、および基盤モデルごとのトークン数上限を理解し、タスクのスコープを適切に設定して分割・要約する設計が求められます。
最後に
Amazon Bedrock エージェントは、複雑なタスクを自律的に実行し、業務プロセス全体を自動化できる強力なマネージドサービスです。自然言語での指示、Action Groups、Knowledge Bases の統合により、一般的な知識だけでなく組織固有の情報に基づいた高度な対応を実現します。明確な指示作成、マルチAZによる可用性、多層防御、そして定量評価といったベストプラクティスに従うことで、安心して導入・運用を始められます。本記事が業務自動化の第一歩となれば幸いです。