Amazon EC2 とは?仮想サーバーの仕組み・メリット・料金を徹底解説
AWS(Amazon Web Services) のサービスについて調べると、必ずといっていいほど登場するのが Amazon EC2 です。クラウド上で仮想サーバーを提供するサービスと説明されますが、オンプレミスの物理サーバーとどう違うのか、本当に自社のシステムに適しているのか、判断材料が欲しいと感じる方もいるでしょう。
初期投資を抑えられると聞くが実際のコストはどうなのか、セキュリティは大丈夫なのか、既存システムからの移行は現実的なのか、こうした疑問を解消しないまま導入を決めるのは難しいものです。
本記事では、Amazon EC2 の基本的な仕組みから主な特徴、メリット、具体的な活用方法まで解説します。
Amazon EC2 とは
Amazon EC2 の基本概念
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)は、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウド上の仮想サーバーサービスです。
参照:Amazon EC2
物理的なサーバーを購入・設置することなく、インターネット経由で仮想サーバーを利用できます。物理サーバーとの違いはハードウェアの購入や設置が不要で、数分でサーバーを起動でき、必要な時に必要な分だけリソースを確保できる点です。
なぜ Amazon EC2 が必要なのか
オンプレミス環境では物理サーバーの購入に多額の初期投資が必要で、トラフィックの急増に対応するためのスケーリングが困難です。
Amazon EC2 では初期投資が不要で、従量課金制により需要に応じて自動的にリソースを増減でき、ビジネスの変化に柔軟に対応できます。
EC2 の主な特徴
1. スケーラビリティ
Amazon EC2 Auto Scaling により負荷が高い時は自動的にインスタンスを追加し、負荷が低い時は削減することでコストとパフォーマンスを最適化できます。
2. 多様なインスタンスタイプ
汎用タイプ(t3、m5)は一般的な Web アプリケーションに、コンピューティング最適化(c5)は計算処理が多いアプリケーションに、メモリ最適化(r5)はデータベースやキャッシュサーバーに適しています。
これらに加え、最新の m7g / m8gn といった Graviton プロセッサ搭載インスタンスを選択することで、より高いコストパフォーマンスを得ることが可能です。
GPU インスタンスは機械学習や科学技術計算に活用できます。
3. 柔軟な料金モデル
オンデマンドインスタンスは従量課金で柔軟に利用でき、リザーブドインスタンス(RI) は1年または3年の契約で割引を受けられます。スポットインスタンスは AWS の未使用キャパシティを活用し割引を受けられ、Savings Plans は使用量をコミットすることで柔軟に割引を受けられます。
過去の利用状況を分析し、将来の成長を見据えて最適な料金プランを選択することで、コスト削減が可能です。
4. 高度なセキュリティ
AWS Nitro System により仮想化のオーバーヘッドを最小限に抑えつつ高いセキュリティを実現しています。
セキュリティグループによるファイアウォール、IAM によるアクセス制御、データ暗号化により多層的なセキュリティを提供します。さらに実務レベルでは、「AWS Direct Connect(専用線)+ VPN」による多層防御や、VDI(仮想デスクトップ)を通じたデータアクセス制限、詳細なログ監視を組み合わせることで、情報漏洩を物理的・論理的に防ぐ対策が一般的です。
5. 迅速な起動とデプロイ
数分でインスタンスを起動でき、物理サーバーの調達に数週間から数か月かかるのに対し、大幅にインフラ構築時間を短縮できます。
EC2 のメリット
コスト面:初期投資ゼロで始められる
オンプレミス環境では物理サーバーの購入・設置に数百万円規模の初期投資が必要ですが、Amazon EC2 では初期費用なしで仮想サーバーを利用開始できます。従量課金制のため使った分だけの支払いとなり、リザーブドインスタンス や Savings Plans を活用すればさらにコストを抑えられます。
運用面:ハードウェア管理からの解放
物理サーバーでは故障対応、ファームウェア更新、老朽化に伴うリプレースなどの保守作業が発生します。Amazon EC2 ではこれらの物理的な管理が不要となり、Auto Scaling やスケジュール起動/停止の設定により運用の自動化も実現できます。
柔軟性:ビジネスの変化に即応できる
必要な時に必要なリソースを確保でき、世界中のリージョンにインスタンスを配置してグローバル展開が容易です。本番環境ではマルチAZ(可用性ゾーン)構成を採用することで、物理的な障害に対してもサービスを継続できる高い耐障害性を確保できます。
拡張性:AWS エコシステムとの連携
Amazon RDS、Amazon S3、AWS Lambda などの他サービスと組み合わせることで、データベース、ストレージ、サーバーレス処理を統合した高度なシステムを構築できます。
EC2 の使い方とインスタンスタイプの選び方
インスタンスの起動手順
AWS マネジメントコンソールから「インスタンスを起動」をクリックし、AMI(マシンイメージ)、インスタンスタイプ、ストレージ、セキュリティグループ、キーペアを順に設定します。設定完了後、数分でサーバーが利用可能になります。
用途別インスタンスタイプの選び方
インスタンスタイプは用途に応じて以下を目安に選択します。
| 用途 | 推奨ファミリー | 選定のポイント |
|---|---|---|
| Web サーバー / API サーバー | t3、m7g、m8g | トラフィックが変動する場合は t3(バースト対応)、安定稼働には m7g / m8g |
| バッチ処理 / 数値計算 | c7g、c8g | CPU 性能を重視。Graviton 系はコストパフォーマンスに優れる |
| データベース / キャッシュ | r7g、r8g | メモリ容量を重視。大規模な DB には r 系を選択 |
| 機械学習 / GPU 処理 | p5、g6 | GPU を搭載。トレーニングには p 系、推論には g 系が適する |
| 開発・検証環境 | t3、t4g | 低コストで柔軟に利用可能。不要時は停止してコスト削減 |
段階的なサイジングの進め方
最初から最適なインスタンスタイプを選ぶ必要はありません。まず小さめのインスタンス(例:t3.small や m7g.medium)で運用を開始し、Amazon CloudWatch で CPU 使用率、メモリ使用率、ディスク I/O、ネットワークトラフィックを一定期間モニタリングします。そのデータをもとにインスタンスタイプやサイズを変更することで、コストとパフォーマンスのバランスを最適化できます。
セキュリティ設定のポイント
セキュリティグループでは必要な通信のみを許可し、不要なポートは開放しないようにします。SSH 接続用の秘密鍵は厳重に管理し、可能であれば AWS Systems Manager Session Manager を利用して SSH ポートを開放せずにインスタンスへ接続する方法も検討してください。
EC2 の主な活用シーン
Web アプリケーションのホスティングでは、ロードバランサー(ALB)とマルチAZ構成を組み合わせて高い可用性を実現し、Amazon RDS と連携して効率的なシステムを構築できます。この際、目標とする復旧時間(RTO)や復旧地点(RPO)を明確に定義した上で冗長化レベルを決定することが推奨されます。
開発・テスト環境では数分で環境を構築でき、営業時間外に自動停止することでコスト削減が可能です。検証環境はシングルAZ、本番環境はマルチAZといった、可用性と予算のバランスを考慮した使い分けが実務的です。
データ処理とバッチ処理ではスポットインスタンスを活用しコスト削減を実現しつつ、並列処理で処理時間を短縮できます。
機械学習では GPU インスタンスでトレーニング時間を大幅に短縮し、Amazon S3 と連携して効率的なデータ分析が可能です。
EC2 の料金とコスト最適化
料金はインスタンス料金(時間単位)、ストレージ料金(EBS)、データ転送料金で構成されます。また、現在はパブリック IPv4 アドレスの使用にも料金が発生する点に注意が必要です。
コスト最適化では、過去のメトリクスを分析して適切なインスタンスタイプを選択し、リザーブドインスタンス や Savings Plans でコスト削減を実現します。
具体的なコストシミュレーション例(東京リージョン)
※1 USD = 150 JPY で計算。料金は変動するため、最新の情報は AWS 公式料金ページをご確認ください。
| 項目 | 【パターンA】開発・テスト環境 | 【パターンB】本番環境(高可用性) |
|---|---|---|
| 主な用途 | Webアプリケーション動作確認用 | サービス提供用Webサーバー |
| インスタンス | t3.medium (2 vCPU / 4GB) | m7g.large (2 vCPU / 8GB) |
| 稼働時間 | 平日日中のみ(月200時間) | 24時間365日(月730時間) |
| 構成 | シングルAZ | マルチAZ(2台構成) |
| 買い方 | オンデマンド | Savings Plans (1年契約) |
| ストレージ(gp3) | 20GB | 50GB × 2台分 |
| IPv4料金 | 約1,500円 | 約5,475円(2台分常時) |
| 月額コスト合計 | 約4,500円 / 月 | 約18,500円 / 月 |
開発環境を営業時間外に自動停止し、Auto Scaling で負荷に応じてリソースを調整することで無駄なコストを削減できます。不要な Amazon EBS ボリュームや古いスナップショットを定期的に削除することも重要です。
よくある質問とその回答
- Q:Amazon EC2 は何に使われるサービスですか
- A:クラウド上で仮想サーバーを提供するサービスで、Web アプリケーションのホスティング、開発・テスト環境、データ処理、機械学習など多岐にわたる用途で利用されています。物理サーバーを購入・設置することなく必要な時に必要な分だけサーバーリソースを利用できます。
- Q:EC2 のメリットは何ですか
- A:初期投資不要でコストを削減でき、ハードウェアの保守管理が不要で運用負荷を削減できます。需要に応じて柔軟にスケーリングでき、マルチAZ構成による高い信頼性や、リザーブドインスタンス の活用によりコスト削減も可能です。
- Q:EC2 の料金はどのくらいかかりますか
- A:インスタンスタイプ、稼働時間、リージョン、および付随するIPアドレス料金等によって異なります。最新世代のインスタンスで Savings Plans を適用した場合、
m7g.largeクラスのサーバーを常時稼働させても、1台あたり月額数千円〜(ストレージ別)に抑えることも可能です。 - Q:どのインスタンスタイプを選べばよいですか
- A:用途に応じて選択します。一般的な Web アプリケーションには汎用タイプ(t3、m5、m7g等)、計算処理が多い場合はコンピューティング最適化(c5、c7g等)、データベースにはメモリ最適化(r5、r7g等)が適しています。過去のメトリクスを分析し CPU、メモリ、ネットワークの使用状況を確認して選択することをおすすめします。
- Q:EC2 とオンプレミスの違いは何ですか
- A:最も大きな違いは初期投資の有無とスケーラビリティです。オンプレミスでは物理サーバーの購入に多額の初期投資が必要ですが、Amazon EC2 は従量課金制で初期投資が不要です。また Amazon EC2 は需要に応じて数分でリソースを増減できますがオンプレミスは物理的な制約があります。
Amazon EC2 はクラウド上で仮想サーバーを提供する AWS の中核的なサービスです。初期投資を抑えながら必要な時に必要な分だけサーバーリソースを利用でき、スケーラビリティ、多様なインスタンスタイプ、柔軟な料金モデル、高度なセキュリティ、迅速な起動という特徴により現代のビジネスニーズに柔軟に対応できます。
Amazon EC2 Auto Scaling による自動調整や、リザーブドインスタンス によるコスト削減など、実践的なメリットが多数あります。インスタンスタイプの選択では過去のメトリクスを多角的に分析し、成長予測や RTO/RPO といった復旧指標も考慮することで、短期的なコスト削減と長期的な拡張性を両立できます。
Web アプリケーション、開発・テスト環境、データ処理、機械学習など多岐にわたる活用シーンがあり、ビジネスの様々な場面で活用できます。
cloudpack では、Amazon EC2 の導入から運用までトータルでサポートしています。適切なインスタンスタイプの選択、詳細なコストシミュレーション、可用性設計、セキュリティ設定、運用の自動化まで Amazon EC2 の活用を総合的にサポートします。