AWS コスト削減を実現する5つの施策と手順【2026年最新版】
AWS の請求書を見て、想定していた金額を大きく上回っていた経験はないでしょうか。従量課金制のクラウドでは、使っていないリソースを放置したり、過剰なスペックのインスタンスを選択したりすると、気づかないうちにコストが膨らみます。
実際、開発環境を停止し忘れて24時間稼働させていた、テスト用に作成した Amazon EBS ボリュームを削除していなかった、パブリック IPv4 アドレスの課金(1時間あたり $0.005)を放置していた――こうした小さな見落としが積み重なり、月額数万円から数十万円のコスト増につながるケースは珍しくありません。
本記事では、AWS のコスト削減を実現するための 5 つの基本施策と、最新の AWS サービスや技術を交えた実践手順を、余すことなく詳しく解説します。
AWS のコスト削減とは
AWS のコスト構造の基本
AWS のコストは、大きく分けて「コンピューティング」「ストレージ」「データ転送(ネットワーク)」の 3 要素で構成されます。加えて、「パブリック IPv4 アドレス使用料」が実質的な固定費として存在感を増しています。
料金計算の基本は 「コスト = 単価 × 使用量 × 稼働時間」 です。インスタンスの単価(スペック)を下げ、稼働時間やリソースの数量を最小化することが、コスト削減の王道です。
コスト削減の考え方
単に安くするのではなく、「ビジネスに必要な性能を維持しながら、無駄を削ぎ落とす」ことが重要です。具体的には、本番環境では RTO(目標復旧時間) や RPO(目標復旧時点) を遵守した冗長構成(マルチAZ)を維持し、開発・検証環境ではシングルAZ化やスケジュール停止によって極限までコストを切り詰めるという「メリハリ」が求められます。
AWS のコスト削減における5つの基本施策
1. 未使用リソースの特定と削除
最も即効性があり、最初に取り組むべき施策です。
- 実践手順: 1. AWS マネジメントコンソールから Amazon EC2 インスタンスや Amazon EBS ボリュームの一覧を確認します。
- 2. AWS マネジメントコンソールの AI アシスタント Amazon Q に「コストに影響している未使用のリソース(未アタッチの EBS、アイドル状態の Load Balancer 等)を特定して」と問いかけます。
- 3. リストアップされた不要なリソースを、依存関係を確認した上で削除・解放します。
- 注意点: インスタンスを停止しても、パブリック IPv4 アドレス($0.005/時)の課金は継続されます。不要な IP は即座に解放し、可能な限り IPv6-only VPC への移行を進めることで、このネットワーク維持コストをゼロにできます。
2. ライトサイジング(適正サイズ化)
リソースの稼働状況を多角的に分析し、過剰なスペックを適正化します。
- 実践手順: 1. AWS Compute Optimizer を活用し、CPU 使用率、メモリ負荷、ネットワークトラフィックが低いインスタンスを特定します。
- 2. 推奨されるインスタンスタイプへの変更を検討します。
- 最新の選択: 最新の Graviton プロセッサ搭載インスタンス への刷新を推奨します。旧世代と比較して単価性能比が大幅に向上しており、性能を落とさずにコストを下げる「アーキテクチャ最適化」が可能です(参考:AWS Graviton プロセッサ)。
3. リザーブドインスタンスと Savings Plans の活用
一定期間(1年または3年)の継続利用を約束することで、大幅な割引を受ける手法です。
- 実践手順: 1. AWS Cost Explorer の「推奨事項」セクションを確認します。
- 2. 過去の使用実績に基づいて算出された、最適なコミットメント額を確認します。
- 3. 最新世代への移行など柔軟性が求められるため、インスタンスファミリーの変更に強い Savings Plans を主軸に据えるのがベストプラクティスです。
4. オートスケーリングの導入
負荷の増減に応じて、リソースを動的に調整します。
- 実践手順: 1. Amazon EC2 Auto Scaling を設定し、CPU 使用率などのメトリクスに基づいて台数を自動増減させます。
- 2. 開発・検証環境においては、夜間や週末にインスタンスを自動で「停止」させるスケジュールスケーリングを徹底します。
- 期待効果: 24時間稼働から営業時間の稼働に絞るだけで、コンピューティングコストを 60% 以上削減 できるケースも珍しくありません。
- スポットインスタンスの併用: 中断耐性のあるバッチ処理やテスト実行には Amazon EC2 スポットインスタンス の利用も有効です。オンデマンド料金と比較して最大 90% の割引 が適用されるため、オートスケーリングと組み合わせることで大幅なコスト削減が期待できます。
5. ストレージクラスの最適化
データのアクセス頻度や重要度に合わせて、最適な保存場所(クラス)を選択します。
- 実践手順: 1. S3 Intelligent-Tiering を有効にします。
- 2. アクセスパターンを 30 日単位でモニタリングし、頻繁にアクセスされないデータを安価な階層へ自動的に移動させます。
- メリット: 手動で複雑なライフサイクルルールを管理する手間を省き、自動階層化に任せるだけでアーカイブコストを最小化できます。
【導入事例】cloudpack によるコスト最適化の実績
cloudpack が支援した、コスト最適化の成功事例を紹介します。
事例1:数百の AWS アカウントを横断最適化(約30%削減)
株式会社バンダイナムコエンターテインメント様
急激な円安による AWS 利用料の高騰に対し、数百規模の AWS アカウントを対象に「AWS Cloud Financial Management(CFM)」を活用。横断的な利用状況調査を行い、インスタンスの再選定や未使用リソースの徹底削除を断行しました。
- 結果: インフラリソース全体のコストを 約30% 削減 することに成功しました。
- 参照URL: https://cloudpack.jp/casestudy/269.html
事例2:DB(Aurora)の I/O 料金課題を解決(約70%削減)
エス・エー・エス株式会社様
Aurora PostgreSQL の I/O リクエスト料金がコストの 8 割を占めていた課題に対し、cloudpack が詳細な分析を実施しました。
- 施策: 最新の Aurora I/O Optimized(I/O 最適化プラン)への移行を提案し、実行。
- 結果: データベース利用料を 約70% 削減 し、将来的なコスト予測の精度も飛躍的に向上しました。
- 参照URL: https://cloudpack.jp/casestudy/24-43.html
コスト可視化と継続的な管理
コスト可視化ツールの活用
単なる請求確認だけでなく、Cost Optimization Hub を活用します。アカウントやリージョンを横断して「どの施策を実行すれば、あといくら浮くか」を優先順位付けして提示してくれるため、迷うことなく対策を打てます。
予算設定とアラート機能
AWS Budgets で月次の予算を設定し、消費率(例:80%)に達した際に担当者へ通知を飛ばします。さらに「Cost Anomaly Detection(コスト異常検知)」を併用し、設定ミスやトラフィック急増による突発的なコスト高騰を即座に検知できます。
タグ付けによるコスト配分
すべてのリソースに「Project」「Department」などのタグを付与します。これにより、どの部署やサービスが無駄を多く出しているかを数値で明確に示せるようになり、現場のコスト意識を健全に高めることが可能です。
データに基づく継続的な分析
コスト削減は一度の作業で終わりではありません。日々の運用では、Amazon Q に対し「先月と比較してコストが 10% 増えた原因を、タグ情報に基づいて詳しく分析して」と指示します。データに基づいた根本原因分析(RCA)を毎月行うことで、リソースの肥大化を未然に防ぎます。
コスト削減を成功させるためのポイント
組織的な取り組み
コスト削減はエンジニアだけの課題ではありません。財務担当者(Finance)と開発者(Operations)が協力し、AWS のコスト管理ツールの推奨事項を迅速に意思決定・実行できる体制(FinOps)を構築することが、最も効果を上げる近道です。
長期的なコスト戦略
短期的なリソース削除だけでなく、Graviton プロセッサ搭載インスタンスへの刷新や IPv6 化 など、数年単位で「インフラの単価」を下げるアーキテクチャへの移行を中長期計画に盛り込みます。また、Amazon CloudFront によるキャッシュ配信や VPC エンドポイント の活用により、データ転送(アウトバウンド)コストを最適化することも重要な長期戦略です。
専門パートナーの活用
複雑なマルチアカウント環境や大規模なデータベースの最適化は、cloudpack のような実績豊富なパートナーによる「クラウド最適化支援」を受けることで、社内工数をかけずに最大級の削減効果を引き出せます。
よくある質問とその回答
Q:リザーブドインスタンスと Savings Plans はどちらを選ぶべきですか?
A: インスタンスタイプの柔軟な変更が必要不可欠であるため、最新世代への移行にも対応できる Savings Plans を強く推奨します。
Q:コスト削減によってサービスの性能が低下しないか心配です。
A: 適切なコスト削減では性能を維持します。SLA やサービスレベルの要件を考慮に入れ、Graviton プロセッサ搭載の最新インスタンスへの刷新を行えば、むしろ性能を向上つつコストを下げることが可能です。
Q:組織全体でコスト意識を高めるにはどうすればよいですか?
A: リソースへのタグ付けによりコストを部門ごとに可視化し、Amazon Q を活用して現場が「自分たちのリソース」を自律的に分析・最適化できる環境を整えるのが効果的です。
Q:未使用のパブリック IPv4 アドレスにどれくらいコストがかかりますか?
A: 1 個あたり月額 約 $3.65(約 550円〜)です。10 個放置すれば年間で 6 万円以上の損失となります。インスタンス停止中も課金される点にご注意ください。
Q:コスト削減の効果をどのように測定すればよいですか?
A: AWS Cost Explorer で施策実施前後の料金推移を比較するのはもちろん、リクエスト数やユーザー数あたりの単価(ユニットコスト)が改善されたかを分析するのが、より高度な測定手法です。
AWS のコスト最適化は、本記事で紹介した施策を組み合わせ、継続的に取り組むことで大きな効果を発揮します。Amazon Q による運用の効率化、Graviton プロセッサ搭載インスタンスへの刷新、IPv6 化によるネットワークコスト削減など、取り組むべきテーマは多岐にわたります。
cloudpack では、上記のような実績に基づき、お客様の環境に合わせたコスト最適化診断を提供しています。まずは現状の可視化から、私たちと一緒に始めてみませんか?