AWS AI エージェント入門|Amazon Bedrock Agents の構築・料金・活用事例まで解説
ChatGPT の登場から3年。生成 AI は「質問に答える」段階から、「タスクを実行する」段階へと進化しています。
単純な質問応答では解決できない業務が多数存在します。社内の複数システムから情報を収集し、データベースを更新し、外部 API を呼び出して処理を完了させる。こうした複雑なワークフローを、人間のように自律的に実行できるのが AI エージェントです。
Agents for Amazon Bedrock を使えば、コードをほとんど書かずに、設定ベースで AI エージェントを構築できます。
会議室の予約、カスタマーサポートの自動化、レポート作成など、月額数千円から始められ、24時間365日稼働し続ける AI アシスタントを実現できます。
本記事では、AI エージェントの基本概念から、AWS での構築方法、具体的な料金体系と3つのユースケース別コスト試算(月額3,050円〜315,000円)、活用事例まで、実践的な情報を解説します。
AI エージェントとは
AI エージェントは、ユーザーの指示を理解し、自律的にタスクを実行するシステムです。ここでは、AI エージェントの基本概念と特徴について解説します。
AI エージェントの概念
AI エージェントは、単なる質問応答システムを超えた機能を持ちます。
自律的なタスク実行
AI エージェントは、ユーザーから与えられた目標に対して、どのような手順で達成するかを自分で考え、実行します。例えば、「来週の会議室を予約して」という指示に対して、エージェントは空き状況の確認からシステム登録までを自動的に実行します。
通常の AI との違い
質問応答型の AI は、情報を提供するのが主な役割です。対して AI エージェントは、情報の提示だけでなく、外部システムと連携して実際の業務を遂行する能力を持っています。
AI エージェントの構成要素
- 基盤モデル(LLM):ユーザーの意図を理解し、タスクを計画。
- ツール:エージェントが実行できるアクション(API呼び出し等)を定義。
- ナレッジベース:社内文書などの参照情報源。
AWS の AI エージェントサービス
Agents for Amazon Bedrock
Agents for Amazon Bedrock は、コードを記述することなく、設定ベースでエージェントを作成できるマネージドサービスです。
参照:Agents for Amazon Bedrock 製品ページ
基盤モデルとの統合
Anthropic Claude 3.7 Sonnet などの最新の大規模言語モデルを使用して、高度な推論と判断を行います。モデルの選択により、性能とコストのバランスを調整可能です。
参照:Amazon Bedrock での Anthropic Claude
エージェントの動作原理
- タスクの理解と分解:ユーザーからの複雑な指示を、実行可能な複数のサブタスクに分解します。
- アクションの計画:分解された各ステップに対して、最適なツール(API等)の選択と実行順序を決定します。
- ツールの呼び出し:必要なパラメータを自動で生成し、Lambda 関数の実行や外部 API の呼び出しを行います。
- 結果の統合:各ステップの実行結果をまとめ、ユーザーにとって最適な形式で最終的な回答を生成します。
AI エージェントの構築
構築の流れ
- エージェントの設計:エージェントに期待する役割、目的、およびユーザーに対するペルソナ(口調や振る舞い)を定義します。
- ツールの定義(Action Groups):エージェントが実行できるアクションとして、Lambda 関数や API 仕様(OpenAPI等)を定義します。
- ナレッジベースの準備:RAG(検索拡張生成)に利用する社内ドキュメントなどのデータソースを Amazon S3 に配置します。
- エージェントの作成:AWS マネジメントコンソール上でこれらを統合し、動作の核となるインストラクションを設定します。
Knowledge Bases for Amazon Bedrock の統合
RAG(検索拡張生成)の実装により、自社固有の情報に基づいた回答の根拠(グラウンディング)を明確にし、ハルシネーション(もっともらしい嘘)を効果的に抑制することに寄与します。
Knowledge Bases for Amazon Bedrock を使えば、ベクトルデータベース(Amazon OpenSearch Service、Amazon Aurora、Pineconeなど)の構築や、それらとの複雑なデータ連携も容易に行うことが可能です。
AWS サービスとの連携
- AWS Lambda
- エージェントの「手足」としてビジネスロジックを実行します。サーバーレスで動作するため、実行された分のみの課金となりコスト効率が非常に高いのが特徴です。
- Amazon DynamoDB
- ユーザーごとの設定や、長期的な会話履歴の保存に活用します。ミリ秒単位の応答を返すスケーラブルな NoSQL データベースです。
- Amazon S3
- エージェントが参照するドキュメントの格納や、実行結果として生成したレポート・画像などの保存先として利用します。
AI エージェントの活用事例
- カスタマーサポート:従来のチャットボットでは難しかった、複雑な問い合わせへのパーソナライズされた回答提示や問題解決の自動化。
- 予約・注文の自動化:自然な会話形式での予約受付、リアルタイムな在庫確認と、それに基づく注文処理の完結。
- 社内業務の効率化:膨大な社内規定からの情報検索、週次レポートの自動生成、経費精算などの申請フローの自律実行(※特定のソースに基づき判断を提示)。
- データ分析・可視化:複数のデータソースから必要な情報を収集・集計し、ビジネス判断に役立つ分析結果を生成。
AI エージェント構築のポイント
客観的な評価指標の導入
単に「期待通りに動く」だけでなく、Ragas などの評価フレームワークを導入しましょう。忠実性(Faithfulness)や回答関連性(Answer Relevancy)を数値化して定点観測することが、本番運用における継続的な精度維持には不可欠です。
高可用性とディザスタリカバリ
業務プロセスを自律化・自動化するため、本番環境ではマルチ AZ(アベイラビリティゾーン)構成を採用し、特定のデータセンター障害時も継続稼働できる設計を行います。また、業務の重要度に応じた RTO(目標復旧時間)および RPO(目標復旧時点)を明確に定義しておくことが推奨されます。
セキュリティと通信経路の保護
IAM(AWS Identity and Access Management)を用いて必要最小限の権限のみを付与し、すべての操作を監査ログとして記録します。オンプレミス環境と連携する際は、AWS Direct Connect(専用線)に加え、VPN による暗号化を重ねる多層防御を検討してください。これにより、インターネットを経由しない閉域網内での高い機密性を確保できます。
さらに、機密データを扱う運用環境においては、VDI(仮想デスクトップ)の活用やデータのローカル保存禁止など、物理的な情報漏洩対策を講じることが実務上のベストプラクティスです。
コストと導入効果
【2026年1月時点の最新アップデート】
Amazon Bedrock の進化により、Prompt Caching を活用した大幅なコスト削減が可能になりました。タスクの複雑さに応じて最新の Claude 3.7 Sonnet と軽量な Claude 3.5 Haiku を使い分けるのが現在のスタンダードです。
ユースケース別のコスト試算(月額)
| ユースケース | 想定規模 | 月額コスト(概算) |
|---|---|---|
| 1. カスタマーサポート | 小規模 | 約 3,050円 ($21.82) |
| 2. 社内情報検索 | 中規模 | 約 870円 ($6.23) |
| 3. 予約・注文処理 | 大規模 | 約 315,000円 ($2,250.32) |
コスト最適化のポイント
- モデルの最適選択:高度な推論には Claude 3.7 Sonnet、定型タスクには Claude 3.5 Haiku を選択することで、パフォーマンスを維持しつつコストを最大 90% 削減します。
- Prompt Caching の活用:頻繁に参照される固定のプロンプト情報をキャッシュすることで、入力料金を大幅に抑えることができます。
- プロンプトの簡素化:指示を論理的に構造化し、不要なトークン消費を抑制することで、長期的な運用コストを 30〜50% 改善します。
- 段階的展開(PoC):まずは投資対効果(ROI)が明確なスコープから着手し、成果を確認しながら段階的にスケールアウトすることで、投資リスクを最小化します。
AI エージェントは、業務の自動化を次のレベルへ引き上げます。cloudpack では、Agents for Amazon Bedrock を活用した構築支援を行っています。ぜひご相談ください。