AWS のコラム
COLUMN

AWS 構築の基本手順とポイント解説|設計からセキュリティまで網羅

企業におけるクラウド環境への移行が進む中、 AWS でのシステム構築は多くの組織にとって重要な課題です。一方で、具体的な構築手順や適切なサービス選定、セキュリティや運用を見据えた設計にハードルを感じるケースも少なくありません。

本記事では、AWS 構築の基本的な流れからアーキテクチャ設計、主要サービスの選定、セキュリティ対策まで、実践的な手順とポイントを解説します。

AWS 構築の基本的な流れ

AWS でシステムを構築する際の全体的なプロセスと、構築を始める前に必要な準備について解説します。

構築プロセス

AWS 構築は、要件定義から本番移行まで段階的に進めます。

  • 要件定義
    どのようなシステムを構築するのか、パフォーマンスや可用性の目標を定義します。ビジネス要件に加え、セキュリティや拡張性などの非機能要件も具体化します。モックアップや画面設計書を活用して完成イメージを早期に共有することで、後続フェーズでの大幅な仕様変更を防ぎます。
  • 設計
    要件を満たすアーキテクチャを設計します。使用する AWS サービスやネットワーク構成を決定し、可用性、拡張性、セキュリティ、コストのバランスを調整します。特に可用性においては、単一障害点の排除を意識し、マルチ AZ(アベイラビリティーゾーン)構成やロードバランサーの導入を検討します。作成したアーキテクチャ図は、構築時の指針や運用時のトラブルシューティングに役立ちます。
  • 構築
    設計に基づいてリソースを構築します。ネットワーク基盤から着手し、その後にコンピューティングリソースやデータベースを構築します。Infrastructure as Code を活用し、構築手順をコードとして管理することで、再現性が高くミスの少ない構築が可能になります。
  • テスト
    構築完了後、機能テスト、負荷テスト、セキュリティテストを実施します。想定した機能の動作確認に加え、トラフィックへの耐性や不正アクセスのリスクを検証し、本番移行前に問題を解決します。
  • 本番移行
    テスト完了後、サービス停止時間を最小限に抑える計画を立てて本番環境へ移行します。PoC(概念実証)の段階から本番運用を見据えた設計を行っておくことで、検証で得られたデータや設定をスムーズに移行でき、確実な投資対効果が見込めます。

構築前の準備

AWS での構築を始める前に、アカウントと管理基盤を整えます。

  • AWS アカウントの作成と保護
    アカウント作成後は、最も強い権限を持つルートユーザーのパスワードを強固なものにし、多要素認証(MFA)を有効化して厳重に保護します。
  • AWS IAM の設定
    日常業務でのルートユーザー使用は避け、AWS IAM(Identity and Access Management)を利用して役割に応じたユーザーやロールを作成します。最小権限の原則に従い、必要な権限のみを付与することでセキュリティリスクを低減します。
  • 請求アラートの設定
    AWS は従量課金制のため、Amazon CloudWatch のアラーム機能を使用して請求アラートを設定します。一定金額を超えた際に通知を受け取る仕組みを作り、コストの異常な増加を早期に検知します。

AWS アーキテクチャ設計

適切なアーキテクチャ設計は、システムのパフォーマンスやコスト管理に直接影響します。

設計の基本原則と重要性

適切に設計されたアーキテクチャは、ビジネスの成長に合わせた拡張を可能にし、データ漏洩などのリスクを低減します。設計が不十分な場合、パフォーマンスの低下や予想外のコスト増加を招くため、初期段階での綿密な設計が手戻りを防ぎます。

AWS は、優れたアーキテクチャの設計原則を AWS Well-Architected Framework として提供しています。運用上の優秀性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化、持続可能性という 6 つの柱から構成されており、これらに従うことで品質の高いシステムを構築できます。

参照:AWS Well-Architected – 安全で効率的なクラウドアプリケーション

設計において特に重要な要素は以下の通りです。

  • スケーラビリティ
    需要の変化に応じてシステムの容量を調整します。Auto Scaling 機能を使用することで、トラフィック増減に合わせて自動的にリソースを最適化し、無駄なコストを削減します。
  • 可用性
    システムを正常に稼働させ続けるための仕組みです。複数のアベイラビリティーゾーン(AZ)にリソースを分散配置し、1 つの AZ で障害が発生してもサービスを継続できるようにします。
  • セキュリティ
    多層防御の考え方に基づき、ネットワーク、アプリケーション、データの各レベルでセキュリティ対策を実装します。

アーキテクチャパターン

システムの要件に応じて、適切なアーキテクチャパターンを選択します。

  • 3 層アーキテクチャ
    Web サーバー、アプリケーションサーバー、データベースサーバーを独立したレイヤーとして構築します。各層を分離することで保守性が向上し、必要な部分のみの拡張が可能になります。
  • マイクロサービス
    アプリケーションを小さな独立したサービスに分割します。開発の柔軟性が高く、1 つのサービスの問題が全体に波及しにくい構成です。Amazon ECS や Amazon EKS などのコンテナサービスを利用して構築します。
  • サーバーレス
    サーバーの管理を意識せずにインフラを構築します。AWS Lambda や Amazon API Gateway、Amazon DynamoDB などを組み合わせることで、運用負荷を大幅に軽減しながらコスト効率とスケーラビリティを両立できます。

主要 AWS サービスの選択

AWS には多数のサービスが存在し、用途に応じた選択が求められます。主要なカテゴリ別に特徴を解説します。

コンピューティング

アプリケーションを実行するための計算リソースを提供します。

  • Amazon EC2
    仮想サーバーを提供するサービスです。OS レベルでの制御や特定のソフトウェアのインストールが必要な場合に適しています。用途に応じて多様なインスタンスタイプから選択できます。
  • AWS Lambda
    コードをアップロードするだけで実行できるサーバーレスコンピューティングサービスです。イベント駆動型の処理に適しており、使用した時間分だけ料金が発生するため、間欠的な処理ではコスト効率が高くなります。

参照:AWS Lambda の料金
(※米国東部リージョンの例。リージョンによって料金が異なる場合があるため、実際の利用リージョンでの最新料金を AWS 公式料金ページで確認してください)

  • Amazon ECS / AWS Fargate
    Docker コンテナを実行・管理するサービスです。AWS Fargate を使用すると、サーバーのインスタンス管理が不要になり、コンテナのリソース使用量に応じて自動でスケーリングされます。

ストレージ

データを安全に保存し、適切に管理するためのサービスです。

  • Amazon S3
    高い耐久性(99.999999999%)を持つオブジェクトストレージサービスです。静的コンテンツの配信やバックアップ、データレイクなど幅広い用途に利用されます。

参照:Amazon S3 – クラウドオブジェクトストレージ - AWS

頻繁にアクセスするデータやアーカイブデータなど、用途に合わせて適切なストレージクラスを選択することでコストを最適化できます。

参照:Amazon S3 の料金
(※米国東部リージョンの例。リージョンによって料金が異なる場合があるため、実際の利用リージョンでの最新料金を AWS 公式料金ページで確認してください)

  • Amazon EBS
    Amazon EC2 インスタンスにアタッチするブロックストレージです。データベースなど低レイテンシが必要な用途に適しており、スナップショット機能でバックアップも容易に行えます。
  • Amazon EFS
    複数の EC2 インスタンスから同時にアクセスできる共有ファイルシステムです。自動的にスケールし、使用した容量に応じた料金が発生します。

データベース

データを構造化し、効率的に処理・管理するサービスです。

  • Amazon RDS
    マネージド型のリレーショナルデータベースサービスです。バックアップやパッチ適用が自動化され、運用負荷を軽減します。マルチ AZ 構成により高い可用性を実現します。
  • Amazon DynamoDB
    完全にマネージドな NoSQL データベースサービスです。サーバー管理が不要で、トラフィックに応じて自動的にスケールし、低レイテンシでの一貫したレスポンスを提供します。
  • Amazon Aurora
    クラウドネイティブなリレーショナルデータベースで、MySQL および PostgreSQL と互換性を持ちます。ストレージは最大 128 TB まで自動的に拡張されます。

参照:Amazon Aurora の特徴

高い I/O ワークロードが予想される場合は、Amazon Aurora I/O Optimized を選択することで I/O リクエスト料金が不要になり、コストを削減できる可能性があります。

参照:Amazon Aurora の料金
(※米国東部リージョンの例。リージョンによって料金が異なる場合があるため、実際の利用リージョンでの最新料金を AWS 公式料金ページで確認してください)

ネットワーク

リソース間の通信や外部アクセスの制御を担います。

  • Amazon VPC
    AWS 上に論理的に分離されたプライベートネットワークを構築します。パブリックサブネットとプライベートサブネットを分離し、セキュリティ要件に応じたリソース配置を行います。
  • Elastic Load Balancing (ELB)
    トラフィックを複数のターゲットに分散し、サービスの可用性を向上させます。異常なインスタンスへのトラフィックを自動的に停止するヘルスチェック機能を備えています。
  • Amazon CloudFront
    世界中に配置されたエッジロケーションからコンテンツを低レイテンシで配信する CDN サービスです。グローバルユーザーへの高速なコンテンツ提供や DDoS 対策(AWS WAF との連携)に有効です。

セキュリティの構築

AWS におけるセキュリティは最優先事項であり、複数の観点から対策を講じます。

AWS IAM の設定とアクセス制御

適切な権限管理はセキュリティの基盤です。AWS IAM を使用して、ユーザーやアプリケーションに必要な最小限の権限のみを付与します。IAM ロールを活用して一時的な認証情報を提供し、EC2 インスタンスなどから安全に AWS サービスへアクセスさせます。管理者権限には MFA の有効化を必須とし、不正アクセスのリスクを抑えます。

ネットワークセキュリティ

Amazon VPC の設計において、インターネットからの直接アクセスが不要なデータベースなどはプライベートサブネットに配置します。インスタンスレベルのファイアウォールであるセキュリティグループを利用し、Web サーバーには HTTP/HTTPS のみを許可するなど、最小限の通信に絞り込みます。

データ保護と監視

保存時のデータは AWS KMS などを利用して暗号化し、転送時は SSL/TLS 証明書で保護します。Amazon RDS の自動バックアップや Amazon S3 のバージョニング機能を活用し、データ損失に備えます。
また、AWS CloudTrail で API の呼び出し履歴を記録し、Amazon CloudWatch Logs でシステムログを一元管理します。Amazon GuardDuty を導入することで、機械学習を用いた脅威の自動検出が可能になります。

Infrastructure as Code (IaC)

インフラをコードとして管理する IaC の導入は、構築の効率化と品質向上に直結します。

AWS CloudFormation による自動化

AWS CloudFormation を使用して、リソース構成をテンプレート(JSON や YAML)として記述します。これをバージョン管理システムで管理することで、インフラの変更履歴を追跡し、同じ環境を何度でも正確に再現できます。手動構築による設定ミスを防ぎ、災害復旧時の迅速な環境再構築にも貢献します。

構築のベストプラクティス

AWS 構築を成功に導くための実践的なアプローチを解説します。

段階的な構築アプローチ

大規模なシステムを一度に完成させるのではなく、以下のステップで進めることが推奨されます。

  • Phase 1: MVP(最小機能製品)からの開始
    必要最小限の機能から構築・リリースし、実際の利用状況やフィードバックを早期に獲得します。
  • Phase 2: 段階的な拡張と効果検証
    フィードバックに基づいて優先度の高い機能を順次追加し、CI/CD パイプラインを導入して継続的な改善サイクルを確立します。
  • Phase 3: 本格展開
    システムが安定し運用ノウハウが蓄積された段階で、適用範囲を全体へ拡大します。

運用を見据えた設計とドキュメント化

構築段階から監視やバックアップの仕組みを組み込みます。Amazon CloudWatch によるメトリクス監視や閾値アラームを設定し、問題の予兆を捉えます。また、災害復旧(DR)に備えて RTO(目標復旧時間)RPO(目標復旧時点) を事前に定義し、要件を満たすバックアップの自動化を実装します。パッチ適用や設定変更の定型作業は AWS Systems Manager を用いて自動化し、運用負荷を下げます。また、システムの構成図やトラブルシューティング手順を整備し、属人化を防ぐことが重要です。

構築方法の選択

自社の要件やリソースに応じ、最適な構築体制を選択します。

  • 社内構築
    社内にノウハウが蓄積され、柔軟な変更が可能ですが、AWS の専門知識を持つエンジニアの育成やアサインが必要です。
  • 外部委託
    専門家の知見を活用し、ベストプラクティスに沿った高品質なシステムを短期間で構築できます。一方で委託費用が発生します。
  • ハイブリッド
    アーキテクチャの基本設計や高度なセキュリティ設定を外部専門家に依頼し、構築・運用作業を社内で実施することで、コストを抑えつつ自走力を高めることができます。

最後に

AWS 構築は、要件定義から運用設計まで各プロセスを丁寧に進め、可用性やセキュリティのバランスを確保することが重要です。適切なサービス選定と段階的な導入アプローチを取り入れることで、リスクを最小限に抑えながらビジネス価値を創出できます。自社のリソース状況を見極め、必要に応じて専門家の支援を活用することも成功への有効な手段となります。

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