Google Cloud とオンプレミスを連携させたデータ分析基盤構築で Nextflow をセキュアな環境で実行可能に!国立研究開発法人理化学研究所様のクラウドを活用した導入事例

掲載日:2025年8月25日
お客様の課題
- オンプレミスとクラウドの連携に伴うネットワーク統合とセキュリティ制御の複雑さを改善する必要があった
- 機微な研究データの安全かつ効率的な転送と高速処理環境の構築を求めていた
対応と結果
- Google Cloud とオンプレミスを専用線で接続し、セキュアかつ柔軟なリソース調整が可能な研究基盤を構築
- Cloud Workstations と Batch を活用し、高速な遺伝子発現解析パイプラインの動作を実現
国立研究開発法人理化学研究所様(生命医科学研究センター 予測医学特別プロジェクト 桜田一洋プロジェクトディレクター、医療データ数理推論特別チーム 川上英良チームディレクター、免疫器官形成研究チーム 川崎洋客員研究員)とアイレットは、2024年より共同研究をスタートし、Google Cloud の最新技術を活用したシステム開発、データ解析環境の構築などを推進しています。今回、研究に必要な機微情報をオンプレミス環境から Google Cloud 上にセキュアに転送し、高速な研究パイプラインを稼働させるための環境を設計・構築しました。
クラウド上での高度な遺伝子研究を支える、安全でスケーラブルなデータ基盤構築が必要に
国立研究開発法人理化学研究所様(以下、理化学研究所様)は、日本を代表する自然科学の研究機関であり、生命医科学、物理、化学、計算科学など多岐にわたる分野において世界トップクラスの研究を推進しています。近年は、膨大な研究データの解析・活用を支える高度な情報インフラの整備にも力を入れており、AI やクラウド技術を活用した新たな研究環境の構築を推進しています。
2024年からは、Google Cloud を活用したデータ駆動型研究基盤の整備に取り組んでおり、アイレットとは医科学研究向けの解析基盤構築において共同研究を進めてきました。たとえば、Google Cloud の最新 AI 技術を活用し、研究データの統合・解析・活用を促進する仕組みを構築しました。クラウドの特性を生かしながら高度なセキュリティとスケーラビリティを両立する研究環境を実現しています。
プレスリリース:アイレット、理化学研究所との共同研究において、Google Cloud の最新 AI 技術を活用した医科学研究向けデータ駆動型解析基盤を構築
理化学研究所様では、クラウドとオンプレミスを連携させた研究基盤の運用において、ネットワーク統合や管理の複雑化、セキュアなアクセス制御に課題を抱えていました。特に Google Cloud 上で動作する遺伝子発現解析パイプラインを Nextflow 経由で実行するにあたり、機微な研究データを安全に扱えるプライベートネットワークの構築と、柔軟な計算リソースの確保が求められていました。
Cloud Workstations × Batch により、遺伝子発現解析パイプラインを Nextflow でセキュアかつ柔軟な実行基盤を構築
理化学研究所様が求めていたのは、オンプレミスに保管された機微な研究データを、安全かつ効率的にクラウド上へ転送し、高速な処理が可能な研究基盤を構築することでした。その実現に向けてアイレットは、Google Cloud とオンプレミス間を専用線で接続し、外部からのアクセスを遮断したプライベート環境を構築。データのセキュリティとリソースの柔軟な拡張性を両立するためのネットワーク・実行環境設計を行ないました。
ネットワーク面では、Google Cloud の VPC を中心に設計し、Cloud VPN および Cloud Interconnect によってオンプレミス環境とのセキュアな接続を実現。Google Cloud の各種サービスとの通信には Private Service Connect を採用し、VPC Service Controls および VPC Firewall によるアクセス制御と合わせて、完全にプライベートな経路での安全なデータ連携を可能にしました。
また、スケーラブルで再現可能な科学的ワークフロー管理ツール「Nextflow」を Cloud Workstations 上で実行し、ワークロードを Batch でスケーラブルに処理するアーキテクチャを構築しました。アイレットは、Batch の活用による柔軟なリソース調整の実現に加え、Nextflow をプライベートな VPC 内で実行するためのパラメータ設定なども支援。これにより、マネージドサービスを安全かつ効率的に利用できる環境を整えました。
さらに、セキュリティをより強化するため、Cloud Workstations 環境はインターネット接続から遮断し、アクセス経路を他クラウドサービスの仮想デスクトップ経由に限定。加えて、Google Cloud の API 実行に関しては、VPC Service Controls を活用して許可対象を最小限に絞り込み、利用サービスの精査や細かな権限制御、ファイアウォール設定の最適化も行ないました。クラウド上でのセキュリティ・パフォーマンス・拡張性の最適バランスを実現することで、研究に求められる高負荷な計算処理の効率化と運用性の両立に貢献しました。
この構成により、セキュリティを確保した上で研究データを高速かつ柔軟に処理できる環境を実現しました。また、アプリケーションパフォーマンスの向上により、研究活動全体の効率化が進み、今後の大規模な遺伝子データ解析の基盤としての活用も期待されています。
医療やバイオ分野における研究では、データの機密性と処理性能の両立が求められます。今回の理化学研究所様との取り組みでは、Google Cloud の柔軟なスケーリング機能と、セキュリティ面でのプライベート化を意識したアイレットの技術支援により、従来オンプレミス環境でしか実現できなかった研究環境をクラウド上で実現しました。
理化学研究所様における本取り組みは、現在も段階的に発展を遂げております。今後も、セキュリティと効率化の両軸を実現するための支援を続けてまいります。既存のオンプレミス環境との連携なども含め、お客様のご要望に合わせた最適なクラウド活用をご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
システム構成図

使用プロダクト
◾️Google Cloud
・Virtual Private Cloud(VPC)
・VPC Service Controls
・Cloud VPN
・Cloud Storage
・VPC ファイアウォール ルール
・Service Accounts
・Private Service Connect
・Cloud Interconnect
・Cloud Workstations
・Batch
・Cloud Monitoring
◾️Nextflow
特記事項
本件は、理化学研究所の研究課題「AIを活用したデータ駆動型アトピー性皮膚炎研究(研究責任者:桜田一洋)」にて行なわれました。
案件名 | Google Cloud とオンプレミスを連携させたデータ分析基盤構築で Nextflow をセキュアな環境で実行可能に! |
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クライアント | 国立研究開発法人理化学研究所様 |