マルチ AI エージェントに業務を置換!最新技術の Agent Development Kit と Vertex AI Agent Engine で、カラオケ楽曲関連情報の収集業務を効率化株式会社第一興商様のクラウドを活用した導入事例

掲載日:2025年7月18日
お客様の課題
- 第一興商様が2025年4月に発売した「DAM」の新フラッグシップモデル「LIVE DAM WAO!」にて、デンモク※にキーワード検索やタグ検索機能を搭載しユーザー体験が向上した一方で、楽曲関連情報のデータの選定・設定・充実に時間と工数がかかっていた。
- タグとなるような楽曲の関連情報(略称・年代・ジャンル・タイアップなど)を外部から購入、またはファクトチェックを行ないながら収集し、配信楽曲と突き合わせる必要があった。
- 作業に個人差があり、収集されるデータに統一性がなかった。
※「DAM」で使用されるタッチパネル式の選曲リモコン
対応と結果
- Google の OSS マルチエージェント開発キットである Agent Development Kit と Google Cloud の AI エージェント実行環境である Vertex AI Agent Engine を活用したマルチ AI エージェントシステムを開発・構築。
- ユーザーから受け取った楽曲の情報をもとに、楽曲情報の調査および精査・配信楽曲との突き合わせ・ファクトチェック情報の表示・YouTube 楽曲の提示・登録用のデータの提示までを全自動で実施可能に。
- タグ情報収集の自動化によりコストを削減し、特に楽曲の発売日に関する情報では正答率約80%を達成。
通信カラオケ「DAM」を展開する株式会社第一興商様は、2025年4月に発売した新フラッグシップモデル「LIVE DAM WAO!」のデンモクにおいて、ユーザー体験の向上を目的に、生成 AI を活用したマルチエージェントシステム「楽曲リサーチエージェント」を導入しました。本プロジェクトにて、アイレットはマルチエージェントシステムのシステム開発・構築を担当しました。
楽曲コンテンツの情報充実のために、楽曲情報を自動収集・提案する生成 AI マルチエージェントをご提案
株式会社第一興商様(以下、第一興商様)は、カラオケのリーディングカンパニーとして創業以来50年以上にわたり、歌いやすさ、音質、臨場感あふれる映像など、機能・コンテンツの充実とともに幅広い音楽の普及に取り組んでいます。同社が提供する通信カラオケ「DAM」では、「歌う楽しさ」と「歌う環境」を追求し、音楽文化のさらなる振興と楽しいコミュニケーションの場を提供することを目指しています。
第一興商様は、2025年4月に発売した「DAM」の新フラッグシップモデル「LIVE DAM WAO!」において、デンモクにキーワード検索やタグ検索機能を搭載することでユーザー体験を大きく向上させるアップデートを実施。検索機能が搭載されたことで、ユーザーは楽曲の略称やタイアップ情報などから目的の曲をより簡単に検索できるようになりました。
しかし、便利な検索機能を実現するには楽曲に紐づく豊富な関連情報(略称・年代・ジャンル・タイアップなど)の充実が不可欠。担当者がこれらの情報をファクトチェックを行ないながら収集し、「DAM」の配信楽曲と突き合わせる必要があるため、時間と工数がかかるという課題がありました。また、楽曲によっては、関連情報の収集に伴いリサーチ会社からデータの購入が必要となる場合があり、そのコストも負担の一つに。加えて、担当者によって作業の差があり、収集されるデータにばらつきが発生していました。
そこでアイレットは、楽曲の関連情報収集作業の自動化に向けて、情報収集プロセスをヒアリングし、生成 AI を活用したマルチエージェントシステムで作業を行なうことでの課題解決をご提案いたしました。
Agent Development Kit と Vertex AI Agent Engine を利用し生成 AI マルチエージェントシステムを迅速に開発!実業務でのスムーズな活用を実現
今回は Google の OSS マルチエージェント開発キットである Agent Development Kit(以下、ADK)と Google Cloud の AI エージェント実行環境である Vertex AI Agent Engine を活用したマルチ AI エージェントシステム「楽曲リサーチエージェント」を開発、構築しました。
さらにバックエンドのマルチ AI エージェントシステムを利用しやすくするために、Cloud Run と Streamlit で Web UI のフロントエンドを構築しています。
ADK では Gemini などの LLM を活用したマルチエージェントシステムを迅速に開発することができ、今回作成した「楽曲リサーチエージェント」は以下のサブエージェントとツールで構成されています。
・楽曲関連情報収集サブエージェント(Google 検索ツールを利用)
・DAM 配信楽曲データベース SQL 検索ツール
・楽曲関連情報構造化サブエージェント
・DAM 楽曲セマンティック検索サブエージェント(Vertex AI Search を利用)
・YouTube 検索ツール(YouTube API を利用)
具体的には、司令塔となるルートエージェントがシナリオに沿ってユーザーのリクエストに応じて、サブエージェントとツールを使い分けながら最終的な目的である楽曲関連情報の推薦に向かってタスクを計画し自律的に実行していきます。
まず、ユーザーから受け取った楽曲名または楽曲名とアーティスト名の組み合わせ、または「DAM」の配信楽曲 ID から楽曲の情報を Google 検索ツールを用いて収集するサブエージェントを実行。配信楽曲 ID を受け取った場合は、前回のプロジェクトで構築した配信楽曲データベースを SQL で参照するツールを実行し、楽曲名とアーティスト名を照会します。

(画面イメージ)
次に、楽曲関連情報を構造化するサブエージェントに処理を移譲し、収集した情報を整理。そして、配信楽曲データベースにセマンティック検索(文脈などから検索者の意図を理解して検索する技術)を行なうツールを利用してデータ突き合わせのための配信楽曲 ID を取得し、参考情報として YouTube 動画を YouTube API で検索する YouTube 検索ツールを実行します。


(画面イメージ)
最終的に利用しやすいファイルフォーマットに変換してユーザーに提示します。

(画面イメージ)
第一興商様には、現行の楽曲関連情報の収集業務と並行で本システムをご利用・検証いただいており、外部からのデータ購入が不要となったことによるコスト削減をご確認いただきました。また、AI エージェントの活用によって調査業務が標準化され、特に楽曲の発売日に関しては正答率約80%の結果が得られるようになったことで、統一性のあるデータ整備が可能となりました。
なお、本格的な業務利用を見据えて、今後も評価とブラッシュアップをアイレットが伴走して続けていき、その他の業務にも AI エージェントを活用していく予定です。
今後もアイレットは、「Google Cloud 生成 AI 導入支援サービス」の提供をはじめとする、Google Cloud における豊富な生成 AI 活用実績を通じて、お客様のビジネス成長とデジタル変革に貢献してまいります。
システム構成図

使用プロダクト
◼︎Google Cloud
・Agent Development Kit
・Vertex AI
・Gemini 2.5 Flash / Pro
・Vertex AI Grounding for Google Search
・Vertex AI Search
・Vertex AI Agent Engine
・Cloud Shell
・Cloud Storage
・Cloud Run
・BigQuery
・YouTube API
案件名 | マルチ AI エージェントに業務を置換!最新技術の Agent Development Kit と Vertex AI Agent Engine で、カラオケ楽曲関連情報の収集業務を効率化 |
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クライアント | 株式会社第一興商様 |